日記

とみいえひろこ/日記

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

読まれるもののために

油揚げみたいに光る犬でしたゆうべ抱きしめ合って寝たのは 耳を立て大人しくしていたいのです幸せも不幸せも嘘もなく しみじみとふくらんでくる静けさに切り離してゆきたいこと思う 砂かぜにくるぶしのあたり涼しかり怒りや恥ずかしさに溢れいし 鉄くさい風…

小黒世茂『九夏』

なにかが来る前のやうにも遠のいた後のやうにも目をつむる馬 やさしいふりあかるいふりして沖は凪ぎ在所の岬はわたしを忘れた カーテンは水藻のゆらぎ まつくらな自室に鮫が泳いでゐたり 風みたいに何度も生まれるのはよさうけふは銀杏のみだれゐる街 さほど…

2021.11.19

細かなことをこなそうとしているうちに自分のことが混じっていって道が逸れていって、いろいろ先送りしてしまった。こういうときに、時間が飛んでしまう。ああ、やってしまったと思う、放っておいてしまったと、顔を見に行って、戻る。 何かしながら「母なる…

手続き

手続きはとても簡単だった。本人の名前と、それを代理で書いたことを証明するわたしの名前だけ。性別も住む場所も、わたしが何にとっての何者であるかも書かなくていい。何処に説明するための、誰にとっての何者か、ということも。 簡単すぎて崩れ落ちそうに…

2021.11.13

ものを拾えるとき、拾えないときがある。拾えないときがほとんどで、拾えなくても拾えないなりにやっていくにはコツがあるのだと思う。たとえば、拾えるときに、この先に来る〈拾えないとき〉でも拾えそうなものを残し周辺を拾うことなど。希望を編み出して…

2021.11.08

焚き火の音に聞こえるけれどこれは犬がベランダで何かを噛んで遊んでいる音だ、と思っていたら、雨の音だった。 ひとつ進むとその位置からもうひとつ問題が見える。見えたときしまったと思うことも多い。これでよかったのかわからない、と思う。これでいいの…

2021.11.06

どこかまだたくさんの間違いがあるのです。 イ・サンウクの言葉。これは、わたしは真実だと思う。そして、同じ運命を負ったものでなければ結局は分かり合えない。裏切りに終わる。というサンウクの思想は、たとえば経験値などによってもうちょっと深まる可能…