日記

とみいえひろこ/日記

2022.06.11

ディナー・S・ケイロス レナール・ペレス/編 広川和子/訳『ブラジル文学短篇集』 (新世界社)。

 

二段組の、小さな文字の連なった、秘密めいた古い単行本。回復と創作の関係、それも、なんだか肉体的な関係、をつよく感じてしまう。

創作、といってもほんとうに小さな表現、表現といっても外になど表れない表現、内面への、言語化できないあらわれ、どのようなあらわれであっても、あらわれることはすべて回復の意味をもつんだと納得する。

どのように、どこで折り合いをつけるか、どこで線が引けるのか、ということを現実ではやっていかなくてはだめで、そこがいつも、とても難しい。折り合いをつけることなど思いつかなかったところ、線を引くことを試してみることも思いつけなかったところは、現実からはじかれる。ただどうしてもどこかで生き延びてしまう、滲み出してしまう。問題が問題のまま、偏ったまま。短篇のなかでそれらは、そのかたちのままでは現実の世界では生き延びられなかった偏ったすがたと生き方をつづける。生きるために未解決にしたもの、選ばなかったもの。あらわれてしまっては生きられない、とても恥ずかしい、みっともないもの。だからこんなに懐かしいと思う。