2022-07-03 腕 短歌 こちらから倚りかかれば受けいれる腕ふわりと蝿が浴槽にくる アジールというほどのものではなくて蝿這うさまを見ている時間 石鹸の嫌というほど白い香によごれて蝿と入浴をせり ふゆ風もはるの光も背をさする腕もここへは入ってこない 夢よりもかるい抱き寄せ方だった 振りほどいても構わなさそうな 憎しみの速度をゆっくりにさせたら雪柳あんなふうにゆれる するりと今 夜の空気にふれにゆき水を飲む赤い舌あるだろう 水ようかんの冷たさで頬にふれてくる川風 川の光 夜には (「かばん」2022年6月号より)