2021-10-17 ガムを噛むみたいに 短歌 百日紅の色ふかくして雨つづく階下に人の死にたさのある 夏冷えの耳揉みながら撫でている戦いのさなか濡れた枯葉を 水のにおい水のにおいにひたされて窓辺輪郭くらくなるころ うどん屋の明るいひかり吸うような時間がしんと流れ夕方 白くなる信号の下待っているあってもなくても良い役として ガムを噛むみたいに、むかし読もうとしてそのままだった薄い小説 目を瞑りつくる小さな暗がりに蜂一頭のふるえやさしい 波よりも波の色たたえてひそか狼の記す日記の文字は (「かばん」2021年10月号)