日記

とみいえひろこ/日記

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

2021.08.30

人のやりとりがあると、その前後数時間、数十分はざわざわしてなかなか手をつけるべきことに戻れない。 中村祐子『マザリング 現代の母なる場所』(集英社)。この本を読んでいたせいもある。このときに、このひとが、このときに抱えていたことを、このくら…

『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス 木村榮一 訳

それからは終焉が、長く果てしない別れがはじまることになるが、私にとってはそれが人生そのものになった。 それで、この、黄色い雨は何だったんだろう。 たいへんゆっくりだからときどき忘れてしまうけれど、今もわたしがみているこの風景は、わたしが果て…

2021.08.27

放課後デイの先生が異動してしまう時期はいつもふいに来る。ほんとうにさみしい。心からたよりにしてしまうし、すべてこちらの状態を見せてしまうので。異動すると分かっているから、そのときそのとき、心からたよりにしてしまう。このひとのようにがんばろ…

黒やぎのお手紙届きますように

黒やぎのお手紙届けばいいけれど何度もやり直せればいいけど * ふくらはぎかなしいくらい冷えるから綿・杭などを口で運んで 何もかも終わり 快楽に降る雨が嫌というほど光を吐けり 鬼のようにぼくがあつめた紐という紐たち 黒い箱にねむるよ どんな顔で居れ…

口笛

夜更けてひとがダンスの練習をつづける映像 しんとする夜 口笛でふらりと闇を切り裂いて分け入るように曲ははじまり 春の夜のえぐみをふくむ風でしたみずうみをつくるために動いた ない場所にないブランコが揺れている風重く降りてくれば六月 いつかわたしい…

2021.08.23

少しずつでも時間をとれたらいい、窓の外で誰かが電話している。ビルの隙間にのぞくやわらかい大きな灰色の空。雲がはやい、橋の傍の窓。窓のこちらで顔を下げ、顔を上げたらさっきまでの灰色を撫でるように水色のもやもやした空気が動いている。水色が空を…

2021.08.21

あまりはっきり気づけなかったけれど、たしかにそういう時期だと思うし、こういう感じで、こういう周期でこれからも行くんだと思う。波の大小を外にいるわたしが分かるはずがない。大小はない。 前よりも、こちらにいるわたしの理解で物事が進んでいないし、…

山崎聡子『青い舌』

目をつむってものを見るときに温度が手がかりになる。青い舌は目でものを見ないときに使う目であり、ものをいわない舌でもある。そことここを行き来するのが舌なら、赤い舌よりも熱く抽象的な青い舌は、そこより遠く、ここより近くを分け入り行き来すること…

2021.08.19

河田桟『くらやみに、馬といる』(カディブックス) 私がカディと向き合うとき、ヒト同士の関わりあいでは生まれない現象がそこに生じる。馬の認知のしかたはヒトと違うから、おのずと私はヒトであるだけの私ではなくなる。カディは馬であるだけの馬でなくな…

2021.08.18

人間と居ると光が要る。動物と居るときは要らない。ほかのふたりがキャンプにいって家にいない。眩しすぎると思って暗くして過ごした。 今、夏の終わりなんだと思い出す。

2021.08.16

もうこの建物にはわたしのほかに誰もいない。いろいろあったけれど最後のほうはみんなしめし合わせたようにばたばたっと出ていった。 右腕の内側にできた小さな赤い穴から秋が入ってきている。じゅくじゅくした液体がかたまっている。すこしにおうのだろう、…

2021.08.13

終わりが見えてくるタイミングで入れ替わるように次の仕事なりやるべきことが来る。この感じがフリーになった頃から揺らぎながら続いているのは健康的だと思う。ひとつ大きな駆け抜けるような仕事が落ち着く頃、やりたかった仕事、憧れていた仕事が入ってき…

2021.08.12

ゴミだらけの庭の話を読んだ。思い出す子がいる。何かにつけて思い出す子、少し思い出しすぎる子。とくべつに仲が良かったわけでもないし、それどころか、わたしとあの子とで心を通わせたこともなかった。何かの感傷か、何かのうったえか、最近は、自分の記…

2021.08.09

ひとつ終わるとひとつ始まる。またひとつ後回しになって、同じことをやっているだけだと思う。終わったと思ったことが別の仕方であらわれるだけ。それをならしていく役割がはたして必要なのか、それはわたしなのかどうか。わたしでなくてもいいし、この役割…

2021.08.01

すこし休みたくなった。夜気に冷やされた質素な椅子と青く塗られた壁をここに置いて、そのひとは水を飲みに行った。たくさん踊るから、たくさん水が必要なのだ。踊るひとたちは生きることが身体に囚われることだということを知り抜いている、という。囚われ…