日記

とみいえひろこ/日記

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

2023.11.28

感情や感覚のようなものについて。たとえば、罪悪感と呼ばれるものに含まれる成分に近いものを感じとって、心当たりがあって、証拠あつめをしてそちらに寄せていく。持っているもので寄せていく手っ取り早い方法は、自分の身をそちらに寄せていくこと。罪悪…

2023.11.27

いろいろ間に合って、それはいろいろ諦めたからで、ただ、ほんとはもっとつめこまないと無理でもあって、こういう時間がふっとあるときに具体的に迷う。 全員寝ていて夜、なんとか間に合ったことがあり、ヘッドホンで曲を聴きながらヤンニョムチキンをつくっ…

2023.11.23

紙を一緒に見る時間を、夜にとった。すっと手にとって、声を出して読み上げたので、すこしびっくりした。自分のものだから、こうすることがふさわしい。そう言っているような時間だった。こういうやり方でそれをやる、スマートにダイレクトにそれをやる。 数…

2023.11.23

選択と排除、そして屈折と歪曲は彼の選択と排除であり、彼の屈折と歪曲だ。彼が選択した排除だ。彼が屈折して歪曲する。そうであるから彼の作品に見られる事実は彼が選択して排除し、彼が屈折して歪曲した事実だ。 繰り返して言うが したがって小説の中で私…

二三川練『惑星ジンタ』

ありふれた哀しみだから話せない 晩夏に閉ざす遮光カーテン めがさめてあなたのいない浴室にあなたがあらう音がしている 寝たふりをしたまま見えた夢の空をしずかに満たす水銀の雨 人さし指を汚して描く落書きのような約束 青色の雛 運命と片づけられるそれ…

長い八月

のろのろと扇風機回る朝にいてもっと早くに分かりたかった まっすぐで眩しい、痛い 何度でも突き刺してくる光の正しさ たいていのことは悪くは終わらずに何も言わずにそっと去るだけ すずしいね すずしい 囁きあった戸口で別れる前の時間を 長崎の夜景をもら…

2023.11.19

犬に久しぶりにリードをつけることができた。このまま放っておくかもしれないわたし、がうっすら底にいつもいて、それが危うい。それにとらわれる、そういう一人遊びの感じ、だけだと思う。これで保っているのだと思うし、ここにわたしの自由があるのだとも…

2023.11.18

わたしは返しに返した。返しに返して、まだもう何年か返す。終わりが見えていて、終わったと思ったらさらにもう何年か延びるような、気もしている。これが終わらないような気がしている。終わることは、想像できない。 わたしはこれまでずっと、ほんとうに何…

2023.11.17

あれは何だったんだろう、あの時間は何の意味があったんだろう、今あれが何になっているんだろう、わたしたちのなかで。あれらのことは本人のなかにどういうふうに残っているんだろう。きれいさっぱり忘れて、残っていないかもしれないし、わたしだけがまだ…

2023.11.11

原田青『Kくん』、信田さよ子 上間陽子『言葉を失ったあとで』、トリン・T・ミンハの書いたもの。最近電子書籍で読んでいるものがあって、一行ずつ基本的にそんなにとばさず規則正しく読んでいく感覚を覚えた。 ここと、そこの、あいだにいる。関わり方とい…

2023.11.10

越川道夫「月子」、ウタ・フリス 冨田真紀 清水康夫 鈴木玲子/訳『新訂 自閉症の謎を解き明かす』、カリフォルニアピープルファースト/編 秋山愛子 斎藤明子『私たち、遅れているの? 知的障害者はつくられる』、笠原美智子『ヌードのポリティクス』など。…

2023.11.08

なんでそういう話になるんだろう、なんでその感情を前提として話が進むんだろう、なんでここにあるものを見ないんだろう、何度も何度も説明して、そのたびにこちらは迷ったし感情は置いていったし想像した、それでもやっぱり違うと思うというのだけ残った。…

2023.11.07

2016年に「かばん」誌に提出した文章。 みつめ・られる(あう)・たんかとみいえひろこ 大阪は震度四だったみたいですが、地震怖かったです。会社の帰りに見たいつもの川が、異様にきれいに見えました。まだ自分の感覚がすこしふわふわして、パラレルワール…

2023.11.07

つまり、生きるということは「自分の行動の責任は全て自分にかかってくるんだ」と恐怖するよりも「自分の行動の責任はすべて自分で負って行くことなんだ」ということに気がついたとき、私はその恐怖から解放され、大人として自由に生きていくことへの希望が…

2023.11.05

助けてもらうことについて。助ける、助けてもらう、という語が適当かどうかは置いておいて。 やっと、ほんの少し、手応えというか、コツ、骨みたいなもののありかが分かってきたのかも、呼吸が合うときがほんの少し増えてきたのかも、と思った。 助ける側の…

永井陽子『てまり唄』

こころねを語らむとする辺にありてあやしき賤の夕顔の花 すりへらしすりへらしゆく神経の線香花火ほどのあかるさ 丸薬がころがりゆける床下に水色の尾のごときもの見ゆ 冬瓜が次第に透明になりゆくを見てをれば次第に死にたくなりぬ 明るいところを見るんだ…

2023.11.03

そのあと、いつものように闇のなかへ入る。あたたかい、自分のこれまでのにおいのなかに。白い、やわらかい足が闇から出ている。歩かないから足の裏がやわらかい。移行のための儀式、この足の持ち主にとってのそれは、このくらいひんぱんに必要なんだ、とあ…

『富田豊子歌集』

もみ殻は堆のごとくに積まれゐて誰か小さき火をつけに来る 晩秋の風に吹かれて永遠にあゆみ去ることありや人にも 転がれるパッションフルーツの傷口が濃くなりゆく昨日より今日 しづかなる夜更けの道を犬の啼く声をまねびて男が過ぎる 朽ち果つるものの一つ…