2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧
夜、パンを買いに外に出たらすごく寒くて雪が舞っていた。川面にライトアップされた光がねばついていて、ビルとマンションの窓から光がまだまだ刺してくる。白い満月。 雨が雪になったあと、雪が雨になった、そのあとにできた水たまり。犬の目に映る水たまり…
/// 感覚的な話、すべて感覚的な話。自分は立体的にモノ、モノゴトを見るのがかなり苦手で、感覚的な話ではあるけれど、実際にそうだと思う、当たっていると思う。どこまでも平面としてとらえて見ていくと自分のなかでは大丈夫な感覚がある。うまくいくとひ…
ア、まだ、朝、ああ、穴、I, I, How I… 朝と夜の散歩が、彼のすべてだった。朝と夜、犬を散歩に連れて行き付き添うことに彼は一生を費やし、それ以外の時間を眠ることに費やした。 「ア」の音は音の連なりのはたらきを全開にしようとする。「あ」が次の「あ…
君は生きている人間のことばかり考えている、君の考えに死を組み込まなければだめだ 内藤廣『内藤廣の頭と手』(彰国社刊) わたしの選んだ仕事は優雅で居場所がなく、姿を変えつづけ生き延びさせられているということ。わたしにしか、一回きりしか有効でな…
とにかく良いとほれこんだら、夢中になって対象に食い入ること意外にどんな方法があるでしょうか。 著/粟津潔 編集/粟津デザイン室『デザインする言葉』 (フィルムアート社) 隣のページにあった絵がにおうようにきれいだった。暗がりに食い入る肉のにお…
この部屋は乾燥がすごいので加湿器とタオルの様子をこまめにみることになる。何をしていても没入するまではゆかず、加湿器の切れるタイミングで加湿のことに引き戻される。ここでリズムができていて、ぜんぜん仕事していない気もする。何をやっていても加湿…
白ければ白いほど得体の知れない味がする。と、べろべろに酔った頭で声を聞いたような気がする。大きなバニラの花が咲いていた。もっと遠回りすればよかったのに、どうせ辿り着けないのだから。どうせ捨てられるのだから。怖いところをひとつ過ぎて、もっと…
息つめて盗み聞くことゆるされていたりき紫苑の色のフードに 小さくて善いものたちを箱に詰めいつまで続く秋かを知らず 草はらに首すじのつづき眺めて浅いねむりをうつされていた 女の子産まなかったと思いつく母とその母ら産んだあとには べつべつに水のに…
内倉真一郎[私の肖像]ブルームギャラリー(十三)。 もうその人の首も背も、黒幕の真っ暗な闇に溶け込んでしまっている。輪郭がやさしくなって、顔だけが残って。 今日はデータのつくりかたってひとりひとり違うという会話をすこしした。写真家こそひとり…
腰から下が寒く気持ちが浮いていて逸れながらたくさん抱えてしまう。らっきょうが食べたくなって一日らっきょうを食べる理由を探す、理由がなくても食べればいいのだけど、理由を探したい日だった。 小説を読み出したら止められない感じになってしまった。何…
ひとつぶひとつぶ水死なせゆく音として聴けるつめたきわが夜の耳 なみの亜子『「ロフ」と言うとき』(砂子屋書房) なんてきれいで苦しい歌。 周囲におかれた短歌の流れで読むと、この水や音が抽象的なそれでなく、物質としてかたちや重さをもつものを描いた…
好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ 東直子『青卵』(ちくま文庫) 引っ越す前日の夜に少し迷って、浴室に置いていたシャチのおもちゃも詰めた。水族館に行ったときにおみやげで買ったわりとリアルなシャチで、べつにかわいいも…
時間を体内にもっている、金色の生きもの。金色が眩しすぎて生きものの姿はこちらからはっきりとは見えない。生きものが水を飲んでいるときだけ、舐めている水の面の光をはねかえす眼がこちらから見える。水を飲んでいるとき、眼はその水のほか何も映さない…
あるのに、と思う いつも黙ってがたがたしていて悔しくてくやしくて それだけの話だったと思いつつキンポウゲ摘む ひとと別れて ほそくほそくすくなくなって消えかかる思いの芯の見える寸前 首と目でいらないことを示しいる いいんです 今は わたしには 髪を…
雨後の草あはあはとあり生くることけだるくなりしまなぶたに沁み (葛原妙子『橙黄』) つめたく濡れた青い暗い草。草はいつか草と名付けられ、光の見せる存在としてそこにある。弱い、視線の低い位置にのこる小さな光の重たさがある。長い雨の時間をそれ自…
静かなる冬日の海の昏れむとしこの須臾のかなしみはいづこよりきたる わがうたにわれの紋章いまだあらずたそがれのごとくかなしみきたる (『葛原妙子『橙黄』) 「わがうたにわれの紋章いまだあらず」この歌は自分には分かるような分からないような感じで長…
炭、粟、盥、蟻のごとくに運びきてわが體力をひそかに養ふ 原始をとめ火を焚くことを知りし日のその恍惚か背を走るもの 雨後の草あはあはとあり生くることけだるくなりしまなぶたに沁み 夜の葡萄唇にふれつつ思ふことおほかたは世に秘すべくあるらし (唇・…
南部の架空の町、クレイボーンには塩水をたたえた沼がある。傷を負った犬などがやってきて、この町で自らを癒すという。 自分の子が赤ちゃんのときに、明日の水道管の工事のことを考えながら、ほかのことをしながら、寒い時期に図書館で借りた『塩を食う女た…
結婚してからずっと合宿をしているみたいで、ここに越してきてからさらに合宿感が増した。もう合宿ということでいい。 わたしは、家族というのはどうもなにか疑いがあって苦手でできれば避けたい気持ちがつよい、分からないこと抜けていることが多い、冷たい…