日記

とみいえひろこ/日記

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

2023.08.30

その孔からそよ風がふき出し、 木の葉も光も細かにふるえる。 戸棚の縁に貼った紙もかすかにふるえる。 「病む人の一日」(ヤニス・リッツォス 中井久夫/訳『リッツォス詩選集』) 「不確実性に耐えながら関わり続ける」というのは私には確かにとても的確に…

2023.08.29

人に 秘密がないとうことは、財産を持たないかのように貧しく、うつろなことだ。 李箱『失花』 失敗しているのかこれで合っているのかいつも考える。やっと質の良いいやりかたを見つけても、自分がそれをできる力がないことのほうが多いし、さまざまな、細か…

2023.08.26

今になってふと分かった。そこにいたとき、その人らが、その、いちばん上の人が、その場所を何だと思っていたか、彼が彼自身のことを何だと思っていたか。私もまた、彼とは別の道を通ったにせよ、そういうものの持つへんな何か、実体のないそれに救われ、助…

またひとり

なんとはかない体だろうか蜘蛛の手に抱かれればみな水とつぶやく またひとり歩いて帰るという君が必要とするいくつかのさなぎ ほおずきを口にふくんで彼女の子ばかりがいつもここにきている 泣いたっていいんだよって泣いていた義弟があの橋渡り来る (義弟…

2023.08.25

「ソウルに帰る」ダヴィ・シュー/監督。 はじめから言葉は伝わらないものとしてあった。 色について。濃い紫、うすい紫、汚れた紫。いろんなものが混じってそうなった紫。フレディは紫ばかり身につけていた。何年か後、黒に近い赤が顔を出す。唇の色、声の…

2023.08.25

いちにちのなかで何度もやることリストを書き直す。離れていったり失ったり、いよいよしていくのだと思う。分かっていて、準備をしようしようと思いつづけてきて時間をすきまでもとれずここ、だけど、私はこれくらいだと思う。 ニコラ・ブリオー 武田宙也/…

2023.08.20

犬を飼っていると、飼わなければ出会わなかっただろう人に会う。夏の終りで、秋の風がほんのすこし上のほうにただよっている朝早くに、身ぎれいにして、いやな見方だけれど、生活のいろいろなことがぜんぶ私より「上」の水準の人、お金の苦労もなさそうな、…

喉白く

喉白く五月のさより食みゐるはわれをこの世に送りし器 月光の階昇りゆく魚にして瓦斯の火持てる母の照らせる あかときを音高まれる時計にて父母なきものはいのちするどし 『びあんか』水原紫苑(深夜叢書社) 必要があって、もらった時間内でバロック様式の…

2023.08.15

きのうは歩いて、橋を渡るほうのスーパーに行った。雨がもう来ていて、帰りに10分ほど、ほんとうに休憩ができたと感じた時間があった。出ようかなだるいなと思いながら窓の外を見たら雨が白く強くなっている。今逃したら長く出られない、ほどでもないけど、…

2023.08.13

すみません、と言う前、思うとき、浮世さんのことを思い出す。あの映像で浮世さんの内面はひとつも描かれていなかった、と思う。すみません、で引く境界線の位置を自分で決める内面も残っていなかったから。からっぽで、くたくたで、とにかく自分の場所が欲…

信用できるものは怖いもの

冷えた風持ち込んで去ってゆくだけの端役の男の声低くして 窓になる心で声をきいていた途切れたり呻いたり人はする もうここでやめたい鼠渡れずに渡ろうと思わなければよかった すみれ色の長いスカート風を知る嘘をついたら報いを受ける 全部つじつまが合っ…

2023.08.12

今日も、自分の苦手なことについては、ぜんぜん動けずで苦しかった。結局、延ばし延ばしになりいつもと同じになっているけれど、休んであそばせているので、振り返りと必要なものについて少しだけど考えが進められて、嬉しい。よかった。

ああとふ声が

のどに指いれればふれるばかりにてああとふ声がかたまりをなす 今日は、古い時代の外国の短編集を少し読んだ。集められたものを読んだら、ああ、この時代はゆううつを手がかりに、足がかりに、ものを見つめるということをさぐっていたんだ、と分かる気がした…

2023.08.11

一度だけ、もう絶対に会うことのない誰か、すこし似た環境にいるのだろう通りすがりの誰かが、毎晩ひとりで映画を観てから寝るんですと伝えてくれた。 私もそうしていればよかった、と思う。ただただそうしていればよかった。映画に私の答えも問いも全部描き…

2023.08.10

「本気のしるし」(深田晃司/監督 星里もちる/原作)、ほんとに、よかった、と思ってぼーっとしている。どうよかったかを心にしまう。 時間をもらったのと、ふっと息がつけるタイミングがきたのと、荒木飛呂彦先生の動画を教えてもらって少し見たりしたら…

雪ふらずとも

シクラメン売れ残りたる店先の雪ふらずともほのかに明かし 残る側にいることは、明るい場所にいること。明るい場所を私が選び、残る力があってしまったということ。あってしまった、残ってしまった。という思いがどんどんはみ出すけれど、それでもやっぱりそ…

2023.08.09

「闇のあとの光」カルロス・レイガダス/監督・脚本。映画は観終わってすぐ記しておきたくなる。読むものは長く抱えた後に記しておきたくなる。絵は言葉を失う。写真は筋や関係性や理由としての言葉を掻き立てられる。 この映画の主役は草はら。最初の空が紫…

2023.08.09

人と会う、話し合う、が多かった日。少しずつ、調整しつつ調整をしているのが目に見えるかたちで現れてきて、今日を越えたら少し落ち着く予定だった通りに、最終的になった。大まかには。待ち時間があると分かっている待ち時間はかなり落ち着ける。血圧がす…

2023.08.07

前半力が入らず、休んだ。外に出て、帰ってきて、手をつけられずにいたものなども手をつけた。ポストモーテムという言葉を知る。ひとりでチームのようにやっていくにはどうしたらいいかな、など。やることリストの書き方を変えたことで無駄なそわそわ感が減…

2023.08.04

すごく久しぶりにパンケーキをつくった。少し食べて、油っこくて無理で捨ててしまった。 「お母さんの困っていること」が何を指すのか、何周かしてやっぱりよく分からなくなる。私自身がこのことで困っていることは、ない。ただ、私が窓的な、いちばんに近い…

2023.08.04

最近は、大きくふたつ、あらためて思ったことがあった。 外からのぞかせてもらっていて思うことがある。これは芯のところにいる者たちがわかっていて見ている風景とはぜんぜん、まったく違うこと。そのうえで、思うことがあって、このように第三者がそこをゆ…

2023.08.01

わたしは心のなかでいろんな人に頼っていて、その人が亡くなってしまってさびしい。さびしさ、すまなさ、恥ずかしさ、気まずさ。どうしてか久しぶりに思い出して、探したら亡くなっていた。けっこう頼っていたんだと自覚した。 別のことで。誰が何といおうと…