2022-01-01から1年間の記事一覧
今日のように ポケットのように、時間を持つことが出来たら、それでぜんぶ解決するのではないか。と思ってしまう。自分の陥りがちな癖など、位置など、ちゃんと考えたい。何も深さがなく、妙に複雑になってしまっている、長く。まったく簡単なことなのに、と…
突き放して、 もうすこし、もっと向こうに置いて見たい。手で退ける。手、こんなになってしまった。もっと向こう。 ちゃんと見たいから。見た、見た、見た。くっつきすぎてしまって、あわれに見える、みじめに見える。嘘くさい、そういう、答えが欲しいのじ…
小林美代子『蝕まれた虹』(烏有書林) 雲が落ちていて床に それを拾うわたし、拾わないわたし。拾わないわたしは生き延び、拾おうとしたわたしは雲を見続けて、駄目になってしまった。駄目に。誰にとっての駄目に? 最近戦争の本ばかり読んでいる、と思う。…
しみしみとピーマンを焼く夕方に痛むところを探りあてたく みぞれのにおいウォッカのにおい混ざり合う記憶のどこかしんと静かに 花、秋のはじまりに似合う花ゆれる離れた場所ですばやく簡素に 舌打ちに満たない音を響かせて犬が水飲む秋のめぐりに 爪と爪ふ…
野口裕二『ケアとしての物語 ナラティヴ・アプローチの世界へ』(医学書院) 「シリーズ ケアをひらく」の本で、何度か読んでいる。 今わたしがしていることは「ベッドサイド・カンファレンス」だ、と思って安心した。 患者に関するさまざまな情報や今後の看…
音声でガイドをつけたら速く走れて嬉しい。基本的に2日に1回走っているので、走らない日も朝1時間くらいはひとりの時間にしたい。と、仕事などが落ち着いてきたらいつも思う。 高柳蕗子さんがどこかで書いていた、それぞれの理由で短歌をひっそりやめる人の…
1年に何回か、全部の疲れが溜まって眠る。抱えているものがそろそろ終わりそうになって、先が見えてきたときあたりに来る。年末に多い。10時間を超えて眠って、翌日起きたら痛みや気持ち悪さがすこし分離して、部位ごとに感じられるようになっている。それぞ…
そのひとの手には まだ若さがあった 待つことのきずあとが 深く残る 手だけれど ひとの二倍も 時間にいためつけられた 手だけれど。 血の気のうすい白い手は 黒いドレスによく映えた。 中庭に独り坐って 沖に消える船の一隻一隻を 見つめていた。 「夕べの横…
アーサー・クラインマン 江口重幸 五木田紳 上野豪志/訳『病いの語り 慢性の病いをめぐる臨床人類学』(誠信書房) 慢性であるということは、単に、ある孤立した個人のなかで起こっている病理から直接の結果として生じるものではない。それは他者との特有な…
高松里『セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド 始め方・続け方・終わり方』(金剛出版) あとがきに、著者がこの本を記した背景、著者自身のニーズが書かれていたりして読者の心をつかみつつ、深い情報を削ってできるだけ易しく読めるよう…
植民地というものが、仮に資本主義による搾取の歴史であるとしても、植民地が醸成した文化は、その統治が終わっても容易にその土地からは消え去らない。不平等な環境で利益を一方的に収奪される歴史があったとしても、そこに生み出された愉楽は、それを享受…
疲れを味わう時間が来て、いっとき、ただただ疲れる、という時間をもつことができるようになってきた。 吸って、吐く。そのことのように、疲れるという現象のなかに特に意味はない。ほんとうにからっぽで、何も起こらなかったし何も見なかった、何にも出会わ…
窓ぎわの猫一度鳴く 笑わねばならぬ日が重なって剥がれぬ 呼ぶたびに言葉が傷を負うことを知りつつ幾度も呼びたき名あり 疲れやすき私は途中で座りしが先へとなおも引く力あり ふたりだけの詩を詠むあそび沈黙に金木犀のふたつ、みつ、落つ 私じゃないわたし…
なぜなら文学は、一人ひとりの生に言葉を与えることで、個別の経験と感情を社会に開き人々につなげ、時と場所をこえて共有可能にするからだ。たとえば、ウガンダの農村でHIVとともに生きる母親の物語を読むとき、私たちはたしかに、彼女の気持ちを「知ってい…
ペルソナのサンドラがふと愛おしいオレンジの髪のシングルマザー 先生は絵に描いて説明をせりきれいなすみれ色の臓器や血 ブレインストーミングが生まれたのは戦後 明るい部屋に引きずり出したい 齟齬がある 画面のなかを鮮やかな赤いスカートが揺れている …
『親密性』レオ・ベルサーニ アダム・フィリップス 檜垣立哉 宮澤由歌/訳(洛北出版) どういうことを書いてある本なのか、なんだかまだよくわからないで読んでいる。 〈それ〉があって、わたしはあまり〈それ〉を受け入れたくない。でも関わらざるを得ない…
ひとつの波のために 終わって、ごまかせないのだと噛み締めながら、コピーをとりに、ポストに投函しに。 10日くらいは駄目にした。たまたま、ごまかせてごまかすことにしたから、今回はこちらに力を使うことにしたから、ごまかしてひとつの波を見送るまで辿…
アレッサンドロ・バリッコ 鈴木昭裕/訳『絹』(白水Uブックス) 物語を必要とするとき、誰もが、いつも、「それ」(「遠い昔からのやりかた」。「ものごとを呼ぶ名前がないとき、ひとは物語の力を使う」)のことを思う。物語が力を得てしまったとき、別の物…
中井久夫『「思春期を考える」ことについて』(ちくま学芸文庫)。 「本人に恥をかかせぬことです」 鶴嘴も探針も入らぬ 忘却と闇に埋れて 眠る宝石、いと多し。 口惜しや、秘密のごとく 甘き香を深き孤独に 放つ花あまりに多し。 誰も恥をかかないこと。自…
今日見たのは エドワード・ホッパーの絵のなかに出てきそうな二人。バス停のそば。正面を向き、腰に手をあてた妊婦。すこしくすんだ黄色いセーターみたいなワンピースを着たおかっぱの人。その隣に車椅子に乗っためがねの人。グレーっぽい、すこし寒そうな格…
息子とふたりきりになると、後ろめたさからこう話しかけた。 「最初、あんたのこと好きじゃなかったし、いまもそうで、ロバートなんて呼んでるし。ほんとにかわいそうな子」 残念だけどどうしようもない。とにかく好きになれなかった。傷つきすぎていた。疲…
意味が伝わらなければいけない、形式に沿っていなければならない、決まりごとをまもらなければならない言葉のほうについて。態度や様子や悲鳴や、その場で生まれて消えるのではない言葉のほう。口で伝える言葉、書く言葉、というのは、檻のようだと思った。…
第一ホテル、というので単体で街のなかにある建物だと思い込んでいた。第一ホテル13階のレストラン。スマートフォンの地図で見たとおりなら、かなり近い場所にいるはずなのに、そんなホテルはない。信号を渡り、歩道橋を渡り、大きな駅にまた戻る。エスカレ…
でも、私が入るのは当事者会ではなく、家族会だなと思う。どこにいても自分だけちょうど余分で場違いな感じがある。これはずっとつづく。あなたでもなく、あなたでもなく、あなたでもなく、あなたでもなく、内部でもなく、残ってはみだす分が私だからだ。ど…
少しずつ、まもりたい優先順位を選ぶようにしている。これは、気持ちの問題というより、そういう状況になってきたということだとおもう。自分で考えて決めた優先順位を素直に選ぶことを切望していたし計画通りといえるのかもしれない。優先順位の下のほうは…
もしぜんぶ駄目になったらゆく沼のひとつを今朝はふかく愛せり ほつほつと話したことのないことを落ちた実を眺めながら思うも 約束のちぎれながら咲くさるすべり忘れたものと思っていたが あの頃のようにあなたはひとりきり三角座りに煙草など吸う 母の真似…
いつかは出ていかないといけない、いっときだけのこと というのと、自分にとってトラウマティックな状況を慎重に見つめ直そうとしながら経験し直す、という意味もある、というのと、 自分だけの目的が決まっている。そういう場所だから前のめりにもなる。興…
繰り返し何度も語られた物語を語るすべを知り、初めて聞く人にその人自身の物語を理解するためのまだ知られていない鍵を与えること、それがわたしの仕事である。 まだぜんぜん途中だし他のことを考えながら文字を追っているだけだけど(ふわふわするのを落ち…
さいきん自分は「交渉」ということをよくしていたり、しようとしている気がする。相手にそれをみようとしているように思う。少し前までは「駆け引き」だと思っていた。駆け引きというか、駆け引きという言葉の意味をとりまちがっているかもしれないけれど、…
かなりぎりぎり、時間がとてもない、いくつかの苦手なこと、時間のかかること、考えること、進めること、時間をとられると感じること、なんとか間に合ってはいる。午前中もぜんぜん無駄なミスが多くて、ぜんぜん。細かいところをたたいていけば、これらがで…