2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧
しかし、なぜそれが問題なのだろう? 初めのころは、それを理解するためにできるだけのことをするのが彼に対する義務だと思っていた。けれども、やがて、それは間違いだと気づいた。彼は沈黙を選んだのであり、彼の死は謎だった。最後には、彼の沈黙は、彼の…
まんなかにいるから自分の話などして三人でゆくピクニック ろうそくのように走った ほっぺたのふくらむままに風にならって 左半身だけ照らされていま赤い。信号待ちにゆめみるわれは ここに手を入れればずっとあたたかい盗みも出来ないし嘘もつかない 眉薄き…
マフラーが見当たらず、ニットのワンピースを部屋で首に巻いている。風邪、いつも頭と顔じゅうに凝りが集中して痛い、というところからくるのが、今回は喉と鼻だった。治りかけで目のところが痛く、いつもの風邪のはじめのような感じになっている。風邪も生…
「一人」ということばをつぶやくと、とたんに「一人」のうらから別の声が聞こえてくる。 西川勝『「一人」のうらに 尾崎放哉の島へ』 クレア・マッカーデル 矢田明美子/訳『わたしの服の見つけかた クレア・マッカーデルのファッション哲学』、『アルコホリ…
聞き流されること、何度答えても流されること、その残りの部分にしか、こそ、わたしはやっぱり大事だと思う。そこのことしか考えてこなかった。何度も、何年も、後から、自分が聞き流してきたこと、見過ごしたこと、見送ったことに、戻ることになる。最初か…
『ロボット・ドリームズ』パブロ・ベルヘル。隙間を縫って急いで観に行って帰ってきた。よくて、かわいかったことを思い出している。さびしいという感情、流れゆくもの、こんなものだという感傷。ドッグはドッグ、ロボットはロボット。大雑把な名前。 背景の…
『心と体と』イルディコー・エニェディ/監督。 自閉症かなと思われる女性。レゴの人形を使って、相手の言ったことや自分の言ったこと、思ったこと、思っていることを劇にしている。これを毎日やっているのだろう。 あとから、吟味して、時間をかけて、受け…
どういう受容のしかたをするかということ、その受容の様式がそのままそのひとの文化なのだと思う。受容の道のりや、受け止めの時点での出会い方や、時間感覚や……耕されてきた時間に根を張り、そのひとがそのひとのものごととの出会い方、受け止め方をつくり…
間に合わず、すごく久しぶりにタクシーに乗った。雨の日はよく動くんですか。ちょっと動く、けれど、みんな短い距離なんですけどね。そうだよね、と思う。短い距離をこつこつやっていくしかないんですかねえ。すこし話した。タクシーは全部遮断されるので、…
『青昏抄』『禽眼圖』『薄明穹』とあらためて通して読み、何度か読み、感動してしまった。既知のもの、自ずと抱えているものを見つめる時間のなかでなんとかして見えたものを通じて未知のものとつながることがこんなふうに出来るんだ、と、実感に似た感覚で…
Hさんが自分のすべてが見えるようになるためには、いったん躁状態という時期を経るしかなかったのかもしれない。 症状という表現が回復そのもの、ということを、思い出し、忘れ、思い出す。 そのことが遠因となって、Hさんが自分の中の暗い部分に、無意識の…
もういいんじゃないか、置いておいたことはいっぱいあり、それを隙間の時間で見つめなおしても。と、きのう言葉にした。たとえばほかのひとならもっとうまくやれただろう、こんなに状況を引きずっていなかっただろう。早く気づいて良い環境をつくっていただ…
俳句には季語があって、「私」がないという説を聞く。「私」がない、と言われているから、そうなんだな、そうなのかなと思って、何も考えずそう思って読んできた、読むとき。なんとなく集中できずほかに目がいってしまう、なんとなくさびしい感じ、じっと読…
「お母様のお気持ち」を話してきたのではない、こんな長い間。見えないだろうけれど、ここで状況は激しく変わりつづけている、くらくらするぐらい。そのときそのとき、私のもっているもの、私の範囲、私が見えているもの、すべて照らし合わせ、「私は今はこ…
いちむらみさこ『ホームレスでいること 見えるものと見えないもののあいだ』 ゆみさんは、隠れるのではなくむしろ人通りの多く夜も明るい場所で座って眠る。恵さんは、一箇所だけではなく複数の寝場所や居場所をつくっている。寝場所を特定されないように、…
エレーナにとっては奇妙な時期が始まった。酩酊と睡眠の中間の状態で歩いているあいだに、物たちが目の前で混沌から生まれ、深く隠された衝動によってその形をあたえられるように見えた。物たちのこの形が徐々に変化するのを、エレーナは自分自身のなかに、…
二軍ラジオをずっと聞いている。全部聞いてしまいたいのでけっこうかけっぱなしにしていて、かけながら他のことをできるようになったかな、少し。 ・なじみの症状が激しく出ていて、しつこく、しんどい。自分からはまっていく面もあって、何度もこういうのを…
silent おそ夏の水飲み場に覆い被さりおとこはさびしさを深くする 手始めに椅子を壊した夏の手でいつかまたやる巧妙にやる 揉み合ってあとには光残るだけ聞くものも語るものもおらずに 雷のあとに雨きて濡れたまま濡れっぱなしの床にころがる ひらひらと電話…
『絆創膏日記』のはじめのコラムに、「1」という数字の孤独について、書かれていた。ブランコの話も。 「僕はここにいる、僕はここにいる、僕はここにいる」 「ここに僕がいる、ここに僕がいる、ここに僕がいる」それは、まぎれもない事実。瞼を閉じ、人差…