手を離す想像をしたよこがおを見ていたために匂う林檎は
モノクロの写真のそんな顔をしているとき何をかんがえている
駄目にしてしまう手を持つ 取り出してシャワーを浴びせあたためている
頬づえにあわく光の耳眺めたくさんひとをきらいになった
いいえ いいえ いいえ いいえ 知らないのに寄り添わないでほしい
銀紙を可燃のほうへ選分けてサックスブルーの猫の目と遭う
ごみを出し終えてひらたい水色の影のわたしの居残るような
香水が欲しいとふいにつよく思う 人の消えてしまった夜に
(「かばん」2022年4月号より)