日記

とみいえひろこ/日記

長い八月

のろのろと扇風機回る朝にいてもっと早くに分かりたかった


まっすぐで眩しい、痛い 何度でも突き刺してくる光の正しさ


たいていのことは悪くは終わらずに何も言わずにそっと去るだけ


すずしいね すずしい 囁きあった戸口で別れる前の時間を


長崎の夜景をもらう長崎は遠くて少しだけそばにある


だいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶ 早口にいま囁く者かタクシーの窓


西のほうスカイビルへと逸れてゆく心で過ごす長い八月


横長の雲ふたつある夕方にひとりひとりでいつまでもいる

 

 

(「かばん」2023年11月号より)