ふと今日がお別れの日でいいような光と煙うつくしい午後
今日のこと今日終えられることなくてぼんやりしゃがむ小瓶みたいに
打ち明けて良かったことは何もない逆立ちに思うことひとつきり
貧しくもつややかなテーブルクロス泣きながら食べるひとを照らせる
火のそばに椅子 椅子のそばに人 言葉ぜんぶに曝されて立つ
最後には言葉で言わなくてはだめで醤油をちょっと垂らすみたいに
サランラップふわり被され息を吐く食われるものと食うもの、私
伝わるというのはたぶんこんなもの 秋がほんとに短かったね、
(「かばん」2024年3月号)