2025-01-01から1年間の記事一覧
津島佑子『狩りの時代』、耐えて耐えて明日やっと楽になれる。その夜が明ける前に窓から飛び降りた男の話があった。1ページに満たない小さな挿話が心に残った。 ある場所からは何かが見え、またそこからは他の何かが見え、何かを見るために高いところに上り…
生きたくも死にたくもなる夕まぐれ若葉の影が皮膚を滑れり 夜を百夜歩み継ぎたる靴の反り脱ぎたればまた漂う不安 たとえば、ここを出て行きたい、という長い衝動。この作者の歌集を読む時間のなかでわたしは、自分のなかで言葉になったことがいくつかある、…
その赤の重みに垂れてアマリリス 躑躅咲く埋めつくすよに埋めつくすよに 梅雨はいつまでも雨を降らさず ホームレスは完全な一本の煙草を拾う コートから紫色が洩れて零れる ひとりからひとりになりぬ秋の口 憎しみを揺れるミモザに掛けて捨て 真夜中に巨きな…
「許す」ことが許可なのでないとしたら、そこには何があるのだろう? 本のまんなかあたり、ひらがなが多いところ。原初的な、感情にもとづいた言葉からふと語られているところ。子どもにもどる時間が挟まれる。と思う。そこを経てなぜか、「謝る、許す」とい…
「健康保険の書類は?」、彼女が尋ねた。「金曜日までに出さないといけないんです。そうでないと医療費を払ってもらえなくなります」 手のひらで額を打つ。患者が頼んだ書類のことを完全に忘れていた。 オソリオには私に伝えたいことがいくつかあったのだが…
でも痛みはやわらいできている。 ぼくらを取り巻く生命にとても引きつけられる、とてもぐっとくる。自閉症のぼくは何かにつけて感じ方が激しい。喜びのフィルターがない。まわりちちがっていたり、楽しくてはちきれそうになったり、毎日得意の絶頂だったりす…
去年より、落ちるように終わった、どんどん落ちていく、ああ、落ちたんだな、と思う。年末年始、浴びるように配信映画を観た。流し見。 『分離の予感』 目に見える、形になる、あとに残る、そういう〈言葉〉の不完全さ。わたしが言葉と思っているもの、意識…