日記

とみいえひろこ/日記

読書

2024.12.19

『どうすればよかったか?』藤野智明/監督・撮影・編集。チケットをとろうと思ったら残りひとつの前の方の席で迷ったけれど、今日しかなかったのでその席でとって、昼間に観に行った。立ち見の人もいた。 どうすればよかったか? どうすればよかったかはあ…

2024.12.14

西川勝『ためらいの看護』 担当の患者が亡くなった。それを見てきたものとして、受け取ってきたものとして、永遠の謎になってしまったものを時間をかけて受け取るため。そんな意味があるだろうか、その夜同僚と飲み潰れたことがひとつのエピソードとして書か…

2024.11.28

しかし、なぜそれが問題なのだろう? 初めのころは、それを理解するためにできるだけのことをするのが彼に対する義務だと思っていた。けれども、やがて、それは間違いだと気づいた。彼は沈黙を選んだのであり、彼の死は謎だった。最後には、彼の沈黙は、彼の…

2024.11.18

どういう受容のしかたをするかということ、その受容の様式がそのままそのひとの文化なのだと思う。受容の道のりや、受け止めの時点での出会い方や、時間感覚や……耕されてきた時間に根を張り、そのひとがそのひとのものごととの出会い方、受け止め方をつくり…

2024.11.4

エレーナにとっては奇妙な時期が始まった。酩酊と睡眠の中間の状態で歩いているあいだに、物たちが目の前で混沌から生まれ、深く隠された衝動によってその形をあたえられるように見えた。物たちのこの形が徐々に変化するのを、エレーナは自分自身のなかに、…

2024.08.07

奥村隆『他者といる技法』、おもしろかった。こういう本も読んでいてキリがないと思う。まなざしを適切にそらしつつ、わからないように行為し合い関わり合う、このルールから生真面目に外れないようにうまくやるゲームを、なぜ、私もまたこんなに時間や力を…

2024.06.23(窪田政男『Sad Song』を読む会のこと)

野の花は時間に移ろい身を了う、ぼくは夕暮れを喪くしている(時間=とき) こんなにも喉が渇いているというのにぼくはまた水をこぼして マフラーをくれた女を思い出す今年の冬はたれも憎まず(女=ひと) 忘れたきことしかなきか痛みとは引き合う力の隠喩と…

2024.06.20

ここ何ヶ月かは、1、2、3時頃寝て、5、6、7時頃に目が覚めて、ヨガしたり寝たりしながら、何時間かかけて目を覚ます感じ。日中、何回か、何十分かの昼寝は吸い込まれるような感じ。 アニー・エルノーの書くものはほんとうに自己治療的な文章だと思う。個別具…

富岡多恵子『遠い空』

富岡多恵子『遠い空』。なんだか、たまらなかった。 男が中古の自転車を押しのけてすぐそばへきた時、言葉を聴くことも発することもできぬひとなのを朝乃さんは知った。 わたしは知っていることをする。わたしが教えられたことを知っていて、それをする。す…

2024.05.25

杉山春『ルポ 虐待 大阪二児置き去り死事件』 新書で短いけれど、たとえば本人の立場から見えただろうもの、父親の立場から見えているもの、と思われるものが辿られている。 ・虐待防止法ができたのは2000年。介入の仕方が変わって、誰もがはじめてのやりか…

2024.05.14

シャーロット・ランプリングの『ともしび』アンドレア・パラオロ/監督。大庭みな子『寂兮寥兮(かたちもなく)』、ネラ ラーセン 植野達郎/訳『白い黒人 パッシング』。 右が過去、左が未来なら、最後のどんどん螺旋に階段を下りてゆく長い時間は、ぜんぶ…

2024.05.13

ふと作業の手を止めたりした時に、そのことに気づいてしまうと叫び出したくなる。まさに、ずっと長い間、この瞬間を恐れて来たのだ。蓮音は、ようやく悟ったのだった。私は、自分自身と向き合うための余白の時間をなかったことにしたかった。そのために日々…

川田絢音『雁の世』『こうのとりの巣は巡る』

拒絶への感受性、と、言葉にしたら妙な言葉だけれど、川田絢音の文章を読んでわたしが惹かれるのはそういうあたりなんだと思う。拒絶、への、感受、感受の仕方に惹かれる。だから、惹かれ方も独特でないといけないはず。 危ういものが ひとかけらずつあらわ…

小林美代子『髪の花』

「君、おかしいじゃあないか、昨日まであんなに病気じゃあないと頑張ったのに、今日、先生の言う通り全部病気でしたという、そんなに急に判るはずがない、誰かに入知恵されたのでしょう、どうして昨日まで事実だと思ったことが、今日は病気だと判ったのです…

ピエール・パシェ 根本美作子/訳『母の前で』

けれどもわたしはこのリストに何か欠けているような気がする。そしてそれが何なのかをはっきりさせ、それを定義する責任が自分にあるような気がする。そうでなければ、わたしは最後まで自分の役目を果たしたことにならないだろう。 ピエール・パシェ 根本美…

ピエール・パシェ 根本美作子/訳『母の前で』

ピエール・パシェ 根本美作子/訳『母の前で』。とくに後半になって私にはすごくよく、分かる気すらしてしまい、引き込まれて読んだ。ひとつの位置から、あるひとつの流動的な関係が、適切に、近づいたり遠ざかったり、うちに入れたり取り出したりしながらよ…

森本淳生 ジル・フィリップ/編『マルグリット・デュラス〈声〉の幻前』

対象αとしての声は、発話されたシニフィアンの連鎖としてのパロールには還元されない。ラカンが声を対象αと呼ぶのは、声というものが、私たちの欲望がそれへと引っかかることがある、取り替えのきかない(かけがえのない)対象でありうるからだ。とすれば、…

2024.03.09

アルモドバル監督の映画を、続けて観た。ひとつはいつものように途中で話のつながりが分からなくなってしまって、また観ようと思う。 『オール・アバウト・マイ・マザー』、また観たい、いつか。いつもこの人のつくるものは、複雑で、多面的で、多層的で、襞…

2022.10.14 デルフィーヌ・オルヴィルール 臼井美子/訳『死者と生きる』(早川書房)

繰り返し何度も語られた物語を語るすべを知り、初めて聞く人にその人自身の物語を理解するためのまだ知られていない鍵を与えること、それがわたしの仕事である。 まだぜんぜん途中だし他のことを考えながら文字を追っているだけだけど(ふわふわするのを落ち…