津島佑子『狩りの時代』、耐えて耐えて明日やっと楽になれる。その夜が明ける前に窓から飛び降りた男の話があった。1ページに満たない小さな挿話が心に残った。
ある場所からは何かが見え、またそこからは他の何かが見え、何かを見るために高いところに上り、何かを隠すために窓を閉め、身を潜める。だが、ある場面は何も残らない。そういうものは撮ることも、撮られることもなかった。見ている人はいたのか それさえもわからない、でも、どこで誰が何を見ていたか、誰も見ていなかったものが後に何を残すかについて、私たちは決して確かなことはいえないのだ。
パク・ソルメ 斉藤真理子/訳『未来散歩練習』