映画
『どうすればよかったか?』藤野智明/監督・撮影・編集。チケットをとろうと思ったら残りひとつの前の方の席で迷ったけれど、今日しかなかったのでその席でとって、昼間に観に行った。立ち見の人もいた。 どうすればよかったか? どうすればよかったかはあ…
『山逢いのホテルで』マキシム・ラッパズ/監督。 すごくいい映画だった。風の音が耳に残る。いつも風が吹いていた。風、息、うなり声、「アクセントのへんな」言葉。意味をなさない声、声にならない声、沈黙、ざわめきに、ただただ耳をすますべきで、それだ…
ある状況をどのように評価すべきかに関しては、もっぱら当事者の視点からしか答えを出すことができません。 アルベルト・レンツ 宮崎直美/訳 田野中恭子/監修『親の精神疾患とともに生きる子どものレジリエンスを高めるために 家庭、地域、保育・教育現場…
『ロボット・ドリームズ』パブロ・ベルヘル。隙間を縫って急いで観に行って帰ってきた。よくて、かわいかったことを思い出している。さびしいという感情、流れゆくもの、こんなものだという感傷。ドッグはドッグ、ロボットはロボット。大雑把な名前。 背景の…
『心と体と』イルディコー・エニェディ/監督。 自閉症かなと思われる女性。レゴの人形を使って、相手の言ったことや自分の言ったこと、思ったこと、思っていることを劇にしている。これを毎日やっているのだろう。 あとから、吟味して、時間をかけて、受け…
『レア・セドゥのいつわり』。いつも水色の壁が背景にあった。その壁が終わりには貧しく、シンプルになっていることに生々しさや悲しみを感じる。レア・セドゥの着るもの、着方がぜんぶ、素敵だった。人がここへ来て話していって、また訪れて、彼女の悲惨は…
『ベルイマン島にて』ミア・ハンセン=ラブ/監督。向かい合えば破滅、並んで見れば退屈。退屈は、醸造の一種なのかもと思う。ごまかし、つまらなさ、見えなさ、明けない時間などによって、かたちを変えながら、意思をかわしながら、ゆるくつくりつづけられ…
ジェーンは映画のための架空の人物だったという。もしそばにいたら、もしずっと一緒にいて見てくれていたら、と、本人に思う余裕があれば心から思い願っただろう、理想であり支えであり、本人が生きる上で架空だからこそ全体重をかけられる存在であり意味だ…
プールに行きたいから地図見てひとりで行く、という夢。大丈夫かな、と思いながら、そうか、と受け止め受け入れる。 『TITANE/チタン』ジュリア・デュクルノー/監督。ほかにもいろいろ手はあるけれどちゃんとした時間などとれずそれでもいい加減にU-NEXTで…
『草の響き』斎藤久志/監督。人の何かをその最後まで見なくていいし、見てもいいし、見て何があるというわけでもないし、人に人が何かすることはできない、ない。分かっておかなくてはいけないのは、見て何かあると期待して見続けるのはよくないということ…
『墓泥棒と失われた女神』。糸は切れた。戻れない傷、痛み、失敗、によって抱きとめられ、抱きとめた。鏡、水面、地下、棒と穴、向き合う椅子を壊し向き合う椅子を直す女。その女は途中の駅を占拠した、居場所だった。 他者の視線で自分を見ることを完全に否…
『エゴイスト』松永大司/監督。 ・もう1、2回できれば観たいな。すごいいい映画だったな。 ・カメラの揺れ、距離が酔いそうだった。繊細すぎ、おどおどしした、危機感のある目線。顔ばかり見ていただろうか、だんだん行動や手に目がいくようになったろうか…
『凪待ち』白石和彌/監督。苦しかった!後半、大きなお金が動きすぎて札束が何か、無意味の象徴に見えてくるところなどもよく分かる気がする。 郁男のものいいが抽象的になるところがときどきあり、そういうところだと腹ただしくもどかしかった。「おれは疫…
『メイ・ディセンバー ゆれる真実』トッド・ヘインズ/監督。東京出張+ひとに会いに行った。やっと会えてありがたかったりした。雨が降っていて動きにくかった。映画くらい観たいと思って朝チケットをとって観に行ったものの、ぼんやり準備をしていてはじめ…
映画はいつも、今日しかないと思って観に行く。 はしりがき、おもに、本人のまわりにいる人のその居る仕方、関わり方について、のみの感想。 ・無音のつくりかた、切り取り方、目線の揺らしかた、すこし酔いそうな、時間感覚の別のありかたを示すような、も…
シャーロット・ランプリングの『ともしび』アンドレア・パラオロ/監督。大庭みな子『寂兮寥兮(かたちもなく)』、ネラ ラーセン 植野達郎/訳『白い黒人 パッシング』。 右が過去、左が未来なら、最後のどんどん螺旋に階段を下りてゆく長い時間は、ぜんぶ…
『パスト ライブス/再会』セリーヌ・ソン/監督・脚本。映画館に入り座席に座るのがいつもぎりぎりになる。よかったなあと思って、やるべきことが手につかない。小品、佳品、という感じで、こういうのこそ映画館で観てよかったな。細かく気を遣っているとこ…
『マイ・レフトフット』ジム・シェリダン/監督。観た感じを引きずりながら、「プライド」、自尊心、自尊感情、という言葉をモチーフとして、思う機会があった。観念があって、名前のあるものになって、なにか、目安として測られる、量られるものとして理解…
風が吹き暗闇に包まれた時あなたの姿が恋しい時風が吹き 寂しい時は美しいあなたを思い出す元気にしているだろか幸せに暮らしているだろうか見えますか? 私の心がなぜ こんな気持ちで過ごすことになったのか見えますか? 私の心がなぜ こんな気持ちで過ごす…
返事を待ちながら。気がかりの件を考えようとしながら。返事がきて、なんとか返したものの、ぐずぐず気になりながら。 『サントメール ある被告』アリス・ディオップ/監督。データコピーしながら、しゃがんだまま全部見通してしまった。観終えたのが2時。 …
ものすごく忙しく、いくつかのことを考え、一気に歳をとった気分。昨日中に送らなければいけなかったものが、もう送れない時間になってしまって、でも、朝見直して送ることにしてよかった。 『英国王のスピーチ』トム・フーパー/監督。後半、とくに、奥深く…
『カッコーの巣の上で』ミロス・フォアマン/監督。 ・ダンスの時間がとても切なくて、胸に残っている。それぞれが、甘えたい胸に甘えるだけの時間。適切に受け止められる時間。あの時間だけが特別で、軽くて、自由さがあるようで、夢のなかなのにひしひしと…
アルモドバル監督の映画を、続けて観た。ひとつはいつものように途中で話のつながりが分からなくなってしまって、また観ようと思う。 『オール・アバウト・マイ・マザー』、また観たい、いつか。いつもこの人のつくるものは、複雑で、多面的で、多層的で、襞…
『瞳をとじて』ビクトル・エリセ/監督。長い映画だった。思ったことを書いておかないとどんどん忘れてしまう。でも、顔をあれだけ映されたら、顔のこと、顔を見たこと、受けた印象、言葉にも言葉以前のものにもならないあの時間の感じは憶えている。憶えて…
最初からきつい、ずっとしんどい映画だった。光の感じと、衣裳がいいなと思って、服の感じを見ていたら、「穴」が心に残った。穴のあいたセーター、首に巻いた黒いリボン。傷口がどんどん開いて、最後はほとんど穴のタンクトップ。そう思うと、川で雨が降っ…
『愛情萬歳』ツァイ・ミンリャン/監督。流し見してよく分からなくてもう1回見て、分からないまま。糸を引くような感じで、数日後に顔の切ない感じや、何もないひとりきりの箱の感じを思い出す。見たものが内側に入っていて、内側から思い出す。 水、流れる…
『山の焚火』フレディ・M・ムーラー/監督 大きなものを奪われた後にいるような、ここにある何も見ていないような、「祈る」ようにも見える、そういう目つきの顔。その内側で何がどう動いているのか、ここからは何も見えない、わからない。どんな意味もその…
毎日、限界まで仕事していると思う。実際はそうでもない。記録のつけ方をいろいろ試すのは楽しく、自分なりに、ほんとうに、少しずつ、地に足が着いてきたり心もとなくなくなってきたと分かる、でも、もどかしい。本日中にお送りするものを深夜にお送りして…
『さらば愛しき大地』柳町光男/監督。ほんとうに切ないいい映画だった。前半流し見してしまったからつながりもわからなくて、もう一回流し見。砂浜で静かに背をまるめて蟹を食べるシーンとか、心に残ってしまう。どんどんものがなくなっていく描き方も追い…
『茶飲友達』外山文治/監督・脚本。 ・最後のほう、ばらばらばらっと展開したところ。わあ、と静かに思いながらただただ見ていた。 ・ルールと、良い悪いといった価値は関係ないと、ほんとうに思う。ルールはただただルールで、いちばんはじめのところでル…