黒やぎのお手紙届けばいいけれど何度もやり直せればいいけど
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ふくらはぎかなしいくらい冷えるから綿・杭などを口で運んで
何もかも終わり 快楽に降る雨が嫌というほど光を吐けり
鬼のようにぼくがあつめた紐という紐たち 黒い箱にねむるよ
どんな顔で居ればいいのかわからない床のつめたい六月は来る
いちどだけ殴れと言ってそれっきり気がすんで甘いミルクなど嘗め
金色になってうすく透けていってうなずくだけになってしまって
撫でられて撫でられてわたしは時間 なんにも思わないうち暮れる
(「かばん」2021年8月号)