日記

とみいえひろこ/日記

土曜日に

先延ばしするほど赤い花灯り公園のある通りに暮らす

 

翳りつつスミレの色のカーテンが静まっている(声を待つとき)

 

まんなかに光があった できるだけ影に汚れてまもられていたい

 

熱っぽい水と流れて天窓へ光を返すヴィデオ日記は

 

ほの青く粘土は置かれ今だけは誰も誰かにならない時間

 

大雨にしばらく時をつつまれてしんと斜めに声が吊られる

 

発泡酒、きれいだったと思うまで 折り合いをつけ息をするまで

 

幾筋の白い光に射抜かれて犬たちふかくはやく老いゆく

 

 

(「かばん」2021年9月号)