先延ばしするほど赤い花灯り公園のある通りに暮らす
翳りつつスミレの色のカーテンが静まっている(声を待つとき)
まんなかに光があった できるだけ影に汚れてまもられていたい
熱っぽい水と流れて天窓へ光を返すヴィデオ日記は
ほの青く粘土は置かれ今だけは誰も誰かにならない時間
大雨にしばらく時をつつまれてしんと斜めに声が吊られる
発泡酒、きれいだったと思うまで 折り合いをつけ息をするまで
幾筋の白い光に射抜かれて犬たちふかくはやく老いゆく
(「かばん」2021年9月号)