話しながらときどき遠くなりながら桃色の海を思い浮かべる
なにかもう使い果たした気になった あなたの優しさも寂しさも
既視感の多い日がある床にもの拾うとき影が足にひろがり
いちにちをかけて小さな生きものは食べる 冬の色のフードを
忘れられ失いつづけている町の動画が流れ夜を眠らず
ずっとある拾えないでいる羽根いちまいべたべたのあぶらまみれの床に
過ぎ去ってゆく感情を見る顔を見る あなたはわたしを見ない
明日から寒くなるって会ったとき言ってた ほんとに寒い、静かで
(「かばん」2021年12月号)