中井久夫『「思春期を考える」ことについて』(ちくま学芸文庫)。
「本人に恥をかかせぬことです」
鶴嘴も探針も入らぬ
忘却と闇に埋れて
眠る宝石、いと多し。
口惜しや、秘密のごとく
甘き香を深き孤独に
放つ花あまりに多し。
誰も恥をかかないこと。自分もふくめて。それをわたしは、いちばんまもろうとしているように思った。
なんだ、時間をここにつぎこめば、細かく分けていちいち言語化していれば、乗り越えられたじゃないか、時間の配分の問題じゃないか。と、すとんと冷えた気持ち。まだまだ残るざわざわを内側で生き延びさせながら。