息つめて盗み聞くことゆるされていたりき紫苑の色のフードに
小さくて善いものたちを箱に詰めいつまで続く秋かを知らず
草はらに首すじのつづき眺めて浅いねむりをうつされていた
女の子産まなかったと思いつく母とその母ら産んだあとには
べつべつに水のにおいにつつまれるおしまいにした話のほとり
声低きマーチきこえるほんとうのことを言っても壊れたりしない
ここに居るべきでないことは知っていてもろもろと塩を腰に溜めいる
冷えている耳に来てあとすこし居て今夜のニュースを読んでいてほしい
(「かばん」2020年12月号)