待つ時間というのはいつもふいに来る 悪趣味な色の床にうつむき
書き足したところつやめく事務室のガラスの奥へ紙差し出せば
案内の男の声が良い声でどういいのかを考えている
気がかりがいくつか混じりあいながらほどけずにシャボン玉の下ゆく
長くなりそうな電話を持ち替える日なたの白い円のなかにて
折り返しかけた電話の案外と長くなり足のゆびを見ている
青白い顔のどなたか もし、かつて、あるいは、待っていたほうのわたし
湖のほとりにいるならほとりの子 ほとりは傷跡を読んでいる
(「かばん」2022年7月号より)