日記

とみいえひろこ/日記

2020-12-06から1日間の記事一覧

雨後の草あはあはとあり生くることけだるくなりしまなぶたに沁み

雨後の草あはあはとあり生くることけだるくなりしまなぶたに沁み (葛原妙子『橙黄』) つめたく濡れた青い暗い草。草はいつか草と名付けられ、光の見せる存在としてそこにある。弱い、視線の低い位置にのこる小さな光の重たさがある。長い雨の時間をそれ自…

わがうたにわれの紋章いまだあらずたそがれのごとくかなしみきたる

静かなる冬日の海の昏れむとしこの須臾のかなしみはいづこよりきたる わがうたにわれの紋章いまだあらずたそがれのごとくかなしみきたる (『葛原妙子『橙黄』) 「わがうたにわれの紋章いまだあらず」この歌は自分には分かるような分からないような感じで長…

葛原妙子『橙黄』

炭、粟、盥、蟻のごとくに運びきてわが體力をひそかに養ふ 原始をとめ火を焚くことを知りし日のその恍惚か背を走るもの 雨後の草あはあはとあり生くることけだるくなりしまなぶたに沁み 夜の葡萄唇にふれつつ思ふことおほかたは世に秘すべくあるらし (唇・…