日記

とみいえひろこ/日記

雨後の草あはあはとあり生くることけだるくなりしまなぶたに沁み

雨後の草あはあはとあり生くることけだるくなりしまなぶたに沁み

(葛原妙子『橙黄』)

 

つめたく濡れた青い暗い草。草はいつか草と名付けられ、光の見せる存在としてそこにある。弱い、視線の低い位置にのこる小さな光の重たさがある。長い雨の時間をそれ自身の身体のなかに入れたまま、重たさはそこにあわあわと揺れながらとどまる。
まなぶたという膜をへだてて存在と出会っている時間があり、わたしはこちらにいる。生きることはけだるいこととすでに理解した身体を抱えている。出会ってきたものを重たく身体に入れてけだるいまま動かないで・動けないでいるものと、重たいもの同士の、はかない、軽い、いっときの交感と思う。