日記

とみいえひろこ/日記

2022.01.31

そしてあの瞬間が来た。

dは濡れた顔を拭こうとしてタオルをつかんでから離した。落としたも同然だった。

 

「ディディの傘」(『ディディの傘』ファン・ジョンウン 斎藤真理子・訳(亜紀書房))

 

たとえば「怪物」をあらためて思い返す。終わっていても、終わってなお見殺しにしたこと、し続けているということ、そのことにあとになって気づくということ。これを何度も呼び覚まして違う描き方で描くことには意味があって、この場所固有の体験の受け止め方をとおした特別な自罰感や危機感は、読めば読むほど深まっていくように、生きものとして描かれているのだと思う。