「フミノオト fumi note」vol.3
喧嘩ではないから許せもしないこと雨は雨として降っている
杉田抱僕/雨は雨、言葉は言葉、花は花
虹たてば虹のもちたる不確かさ日照雨に入りて見失いたり
杉本美和/虹
わかるはずない おまえなんかに 吐き捨てた後のかおして秋の野がある
とみいえひろこ/休息のために
彼岸花の野へと一人で行きし間の部屋に小さきおまえの気配
野上知子/ゆでたまご
止む間なく羽音のごときに鬱がれて時にキーンと攻められる 耳
堀みどり/季はめぐり
かみ合わぬ会話だけれどにこやかにそんなことなど折り込みずみで
大池アザミ/あいまい
ここの猫、茶白が多かったのにな と広場の若いキジ猫を見て
小坂恵/ゆくもの
甘栗をむいて渡してくれた手は 鴎外のやうなわたくしの兄
斉藤蒔/ひと恋し
花桶を夜に倒せば灯の下に光の屑ははしる、ひろがる
十谷あとり/秋風至
ほかに、
東雪/美術室の思い出
十谷あとり/永田典子のうたを読む
など
2023.1.10 編集発行・十谷あとり