日記

とみいえひろこ/日記

2022.05.30

今日は電話がかかってこなかった。いつもの時間を過ぎて、お昼も過ぎて、雨が降って外が暗くなって、雨の大きな音につつまれるばかり。時間の流れがゆっくりになり、このままずっと電話がかかってくるという約束はなかったことになってしまう気もしてきた。それでいい気もする。

今日もわたしは電話口で同じ話をするんだろうか、違う感じで話すほうがいいんだろうな、こんなに話して何も進まないということは。わたしが進ませないようにしているんだろうな。いつもの時間を過ぎたときにそんなことを考えはじめていたから、電話がかかってこなくてよかった。同じ話をして、進まなさを強固にするよりは。

ただ、では、違う感じで話すとは、違うところからものを見て話すには、どういうふうに話すのがいいんだろう、どう話せば、あるいはどう話さなければ前に進むんだろう。そのことを考えようとするより先に、いつも、いつもの電話がかかってきてしまう。

電話がかかってこなかったから、雨が溜まった階下の様子を見にいった。電話がかかってこなかったことを告げる。このまま今日はかかってこないかも。電話のことはまた明日だね。

ほんとうは、そのままふたりでしゃがんで雨が溜まるのを見る時間をとればよかった、そうすればよかったのだよなと、相手に話さなくてはいけないと感じたことを話すだけ話したあと、上の階に戻りながらいつも思う。話しても何も返ってこないのなら、そんな間違いを重ねず、60cmほど、30cm定規をふたつ分ほど離れてしゃがみ、雨が溜まるのを見る時間をそのひとと共有するほうがぜんぜんよかった。それができたのだったら、ほんとうは何も話さないほうがよかった。

まあでも、今できるのはここまでだった。とまた思う。