海のある場所
ジェノグラムつくづく眺め広がってしまった海を逃れられなく
扇風機の風吹くだけの淡い部屋取り返しのつくものごとばかり
階段を上るとき誰もがひとり膨らむごとに月も皺んで
階段を下りるとき道連れといてきみを思えばほんとうにひとり
火をうつす隙に額を盗み見た。下っていって目尻の皺も
歩きながらはじまる話歩き終え別れる頃には忘れる話
庭師来て心のことなどには触れずあの部屋が踊る部屋、と指さす
いつしかに幽霊でなくここへ来てふしぎな人がブランコを漕ぐ
(「かばん」2023年10月号から)