日記

とみいえひろこ/日記

2024.03.03

瞳をとじてビクトル・エリセ/監督。長い映画だった。思ったことを書いておかないとどんどん忘れてしまう。でも、顔をあれだけ映されたら、顔のこと、顔を見たこと、受けた印象、言葉にも言葉以前のものにもならないあの時間の感じは憶えている。憶えていて、でももうやっぱり忘れてしまっていて、どんどん自分の内側で動いて変わっていく。顔と名前をめぐる時間が、切り取られ、置かれていた。それがそれとして動くように置かれていた、置かれようとしていた、迷いやためらい、失敗、わざとらしさ、偶然性への賭けなどとともに。常に雨や葉ずれの音があって、常に(たぶん)ウイスキーを飲んでいた。ここからここまで、と、切り取られた時間のなかで、私が享けたことを私がやってしまい受け継がせてしまう。何度も同じことをかたちを変えて受け取ろうとしてしまう。切り取り、置く。それをそれとして送り出す。行けるところまで見届けようとする。それが映画をつくる仕事なんだ、と思った。

別の映画のことで気になっていたタンゴがここで聴けた。古い曲、深くて、すごく大人で、たまらないと思った。