日記

とみいえひろこ/日記

鑑賞と障害

2022.01.10

スナウラ・テイラー 今津有梨・訳『荷を引く動物たち 動物の解放と障害者の解放』(洛北出版) 繁殖と搾取を通してわたしたちが生み出した倫理的問題のかずかずを解きほどくことを試みる前に、わたしたちは、異なる動物たちに対するわたしたちの責任にかんし…

2021.07.30

ジョージナ・クリーグ 中山ゆかり・訳『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』(フィルムアート社) そうだよね、それはそうなるよね。なぜこの関係性に思い至らなかったのだろう、生きていくために自分のもっていないもの…

2021.07.29

関正樹 高岡健『発達障害をめぐる世界の話をしよう よくある99の質問と9つのコラム』(批評社) むかしの自分の態度や判断の答え合わせが自動的にはじまっているように、感じながら読んでいた。芯になるのはこの考え方でよかった、ここまではこのとき出来た…

2021.06.06

磯野真穂『なぜふつうに食べられないのか』(春秋社)。 読み終えて本を閉じたときも、タイトルが大きく目に入る。タイトルの意味がやっとわかるし、大きく配置している意味もやっとわかる。読み終えた目に入ってくるタイトルの見え方が変わっていることに気…

2021.05.25

『宣陵散策』チョン・ヨンジュン・著 藤田麗子・訳 オレンジの小さな本。このひとの書いたのをもっと読みたい。今日本語で読めるのはこの本だけ。 雲も風もなく、太陽はあんなに激しく照りつけているのに、どうして森は暗いのか。木に背をあずけて立っている…

キム・ジェンドリ・グムスク 都築寿美枝 李昤京/訳『草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー』(ころから)

そのひとの語りは、聴く側の都合やさまざまな事情でかんたんに、あっさりと風に吹き飛ばされてしまう。語られることでもっと悪くなるかもしれない。いつそうなってもおかしくない危うさをはらみながら聴かれる。 語られる記憶はそのひと自身の長い時間のなか…

2021.03.17

伊藤亜紗『手の倫理』。読みながら、小学生とか保育園児とかだったときの自分が嫌だった手のこと、好きだった手のことを思い出していた。それは明確に自分のなかで決まっていたし、自分だけに分かる、自分だけの、嫌な手、好きな手だと思っていたから誰にも…

中村佑子「サスペンデッド」(シアターコモンズ '21)

わたしは、ここに描かれていないこと、ここではまるで何の問題もないこと、消されていることのほうを、自分が関わるべきものとして選び、関わって、抱えているんだと思う。抱える腕はすりきれかけていて、このやり方では関わりきれないところまでいくことも…

藤本和子『ブルースだってただの唄―黒人女性のマニフェスト』

南部の架空の町、クレイボーンには塩水をたたえた沼がある。傷を負った犬などがやってきて、この町で自らを癒すという。 自分の子が赤ちゃんのときに、明日の水道管の工事のことを考えながら、ほかのことをしながら、寒い時期に図書館で借りた『塩を食う女た…