日記

とみいえひろこ/日記

2020.11.19

引っ越しハイも落ち着いてきてしまった。犬の鳴くのがわたしはこたえるけどふたりはそうでもないんだなと思う。わたしは赤ちゃんとの暮らしをやり直せる機会が巡ってきたみたいな幻想を抱いたりしてしまう。やり直せるというのはなにか失敗を取り戻せるのではないかということ。……やあ、それはないと知っている。

玉葱をおろしたのと、刻んだ玉葱とワカメ、生姜、赤味噌の味噌汁。を、残すんだろうなと思って出した。わたしだけ最後まで食べ、かなり渋い味だった。ほんとは自分はこういうのでいい、これと日本酒だけ飲んでいたい、とふと思う。そういう夜がこれからたまにあってもいいし、なければないでも全然いい。好きな食べものってなくなったなと思う。

本を読んで当てられてしまった。生理前なのかもしれないし、来るのならいい。

 

上岡陽江+大島栄子『その後の不自由 「嵐のあとを生きる人たち」』(医学書院)

読み終えて、表紙の写真をおもしろい写真だなあと思う時間があって、しばらく見ていた。読むように見る。行き来する時間、影を踏みながら知らない影に会いに行く人、陸橋からその雑多な生の行く先を見下ろす目線。見下ろす、と気付くとその目の持ち主がわたしになる。

 

大川の噴水。噴水とはどんな仕組みになっているのか、設定されている時間が来たら前触れもなく一定時間ざああっと水を噴き出す。

前に見たときはその水の姿がぶり返す怒りのように見え、今日見たときは違うように見えた。わりとスケールの大きい噴水で、水が大きく弧を描くし水が吐かれている時間も長いので静かな印象を受けるのは変わらない。激しくて静か。怒りかもしれないしただ時間が来たら出さなければいけない感情かもしれないし、誰にもわからない。