日記

とみいえひろこ/日記

2023.12.31

引き換えにするものや、持っておかなくてはいけないもの、何にとって、ということ、切〈れ〉ずにずるずる続くということ、行き来するということ、黙ることと渡すこと、名前によらないもの、まもるもの、まもらないでいいもの、など。必要なら何度も負けて、何にでも折れて、自分自身のことや、自分のまわりのことに誇りを持って過ごしていこうと思う。嫌でも手放せないものだけが残るだろう。この2日、起きては眠り直してばかり。起きるために寝て、寝るために起きた、という感じ。

 

しかし奥さん、此の世に居る間は人間はどうせ流浪の身ですから、唄は随分と慰めになるものです

大庭みな子『虹の繭』

 

病気は、あらゆるものを革命的に変えるような紛れもない挑戦となる。そう、あらゆるすべてのものを

 

それは、以前ある看護師が化学療法室で私に教えてくれた言葉に似ている。「狼を捕まえるには、狼を使え。」

 

そして、そうしたすべてを失ってもまだ変わらず「私」であること、むしろひどく損なわれることで、より自分らしい私になったことを発見した。人間というものは、喪失状態で生きることでようやくリアルな存在になるかのように。

 

アン・ボイヤー 西山敦子/訳『アンダイング 病を生きる女たちと生きのびられなかった女たちに捧ぐ抵抗の詩学

 

引用の引用。誰の言葉というのでもなく、ページに折り目をつけるわたしは、このようにほとんどぜんぶを奪われた後にやっと残った言葉をさらに折り曲げ、引っ掻き、傷つけ、奪っている。(あなた)が身を挺してまもっていたものをこのように奪い、まったく別のものに調理して食べ、消耗に消耗を重ねさせる。読むというのも、聞くというのも、おおかたがこういう行為なんだと思う。

 

『ロングデイズ・ジャーニー』ビー・ガン/監督 など。