日記

とみいえひろこ/日記

2023.08.30

その孔からそよ風がふき出し、

木の葉も光も細かにふるえる。

戸棚の縁に貼った紙もかすかにふるえる。

 

「病む人の一日」(ヤニス・リッツォス 中井久夫/訳『リッツォス詩選集』)

 

 

「不確実性に耐えながら関わり続ける」というのは私には確かにとても的確に思えた言葉のはずだったし、肝心なときにはまったくきれいごとで空疎なものいいでもある。肝心なときに思うのはもっと情けないもので、ぎりぎりのものを残すくらいの、もっとも現実的な、1回きりの賭け方は何かということ。色川武大阿佐田哲也とか、サガンとか、読んでいてよかったと思う。そちらにすがる。

隣りの建物がかなり近く、そこからいつも人の気配が聞こえてきていたのが最近静かだと気づいた。涼しくなったらベランダで休憩したりしてもいいかもと思う。眠くて眠くて休もうと思って、たくさん寝た。家にある本をだらだら読んだ。全部途中から、途中まで。きつい映画を途切れ途切れで観た。

石川良子さんの書いたもの、自分にはいちばん今のところしっくりくると思う。もっと早くに読んでおけばよかったと思った。「わからない」というひとことでしか表せないものを絶対間違っているのに無茶な訳し方をするのが苦痛で何の意味もない、と、責めながら(しかも抱えきれないから相手を)、それしか選べないというわからなさのなかにいる、というのを、情けながっている自分のことを結局やっていてそこから出られない、というのが、嫌で嫌で、間違っていて失敗していて、それしかないのかとずっと怪しんでいて、どうも、ぜんぜん納得がいかず、ぜんぶ間違っているみたいで。というところにいるだけで。何年も経って、そのこと自体を、自分なりに訳して理解する、彼の経験と捉えてみること、と意味づけした。苦し紛れに。

オ・ジョンヒ 波田野節子/訳『夜のゲーム』、藤本和子『砂漠の教室』、茨木のり子/訳編『韓国現代詩選』、中森弘樹『「死にたい」とつぶやく 座間9人殺害次元と親密圏の社会学』 、ニコラ・ブリオー  武田宙也/訳『ラディカント』、加藤典洋『敗者の想像力』、『学校に行かない子との暮らし』、武内佳代『クィアする現代日本文学 ケア・動物・語り』、澤西祐典『雨とカラス』、石川良子『ひきこもりから考える』『ひきこもりの〈ゴール〉』、アン・ボイヤー 西山敦子/訳『アンダイング』『リッツォス詩選集』ヤニス・リッツォス 中井久夫/訳、などなど。

今日実感したこと。冷たい麦茶、緑茶はぜんぜん飽きないということと、話しすぎて伝わることは何もない、ひとことくらいでいい、ということ。これは、事前に少しだけ何を伝えようか、何のためにかということについて、衝動を剥がしていって迷う時間をこれでもとることが出来たから実感したこと。