日記

とみいえひろこ/日記

2024.04.09

風が吹き暗闇に包まれた時
あなたの姿が恋しい時
風が吹き 寂しい時は
美しいあなたを思い出す
元気にしているだろか
幸せに暮らしているだろうか
見えますか? 私の心が
なぜ こんな気持ちで過ごすことになったのか
見えますか? 私の心が
なぜ こんな気持ちで過ごすことになったのか

 

夜の浜辺でひとりホン・サンス/監督

黄色い壁を背に、外へ出て、煙草を吸いながら口ずさんでいた歌。ひとりで鼻をすすって、それが歌のはじまり。煙草を吸い終え、歌い終えて、扉の内にすばやく戻る。

この映画を観たのは2、3回目で、浜辺でひとり、「夜」の場面はなかったのにかかわらず浜辺の時間を「夜」と名づけるのであれば、自分が思っていたよりもおおかたのことが夢として描かれていたのかもしれない。と思った。

いずれにしても、ひとが見るものはぜんぶ夢のようなもの。ホン・サンスの映画のカメラのようなもの。ホン・サンスの映画のカメラは、見るものの意思とか暴力とか、見ることのコントロールのできなさ、ままならなさ、所詮いっときの自分の都合のいいようにしか見ることができないという悔しさ、愚かさあわれさを、思い起こさせる。観終えていつも、ああっと頭を掻きむしりたくなるのはこの悔しさに由来するのかもしれない。悔しいと、見る見られるを混ぜこんで持つ人は言う。映画の中で。「長く後悔すると甘くなる」とも。甘くなるのか。傷の癒える時間のなかから染み出してゆく甘さ、傷が残ることでそこへいつでも帰ってゆけてしまうことの甘さ。傷というものの持つ時間性、傷が場所をつくっていく乱暴さ、仕方なさ、傲慢さ。