「小説家の映画」ホン・サンス/監督
とっても、よかった。なぜ、こんなところで泣けてくるのだろう、ひとことひとことが誰かから、ふと、発される。誰かから発されるまでのちょっとした、その誰かの内面との時間差とか、記憶のズレ、言葉にならないことの籠り方、などが生々しくて、温度があって、人という生き物の危うさや脆さや習性みたいな、何か存在を見た、という感じ。
映画館に観にきてよかったなと思った。なんでもない、そのひとことが出てくるまでのささやかなささやかな、ほとんど忘れてしまったこと、しまうこと、の積み重ねを、少しだけ映画という不思議な乗り物に乗って見に行き直すことが出来たのかもしれない、思う、ということが出来るのかもしれない、とか、
これがこの人の映画(この人の思う映画、この人の見つけた映画)なんだと思ったのと、出続けているキム・ミニもすごいと思った。良い人とか、道徳心、とか、自分ひとりの人生を大事にするということや、目の前の人を心から肯定すること、それはどういうことか、どうにかしたらそう出来るのかもしれない、とか。あることになっているけどそんなものない、ということになっているものを、もしかしたら方法をさがしていくなかで「思う」ことが出来るのかも、と、心を動かす。
スカイビルのあたりへ本当に久しぶりに行った。こんなあけっぴろげなところだったのかと思った。