日記

とみいえひろこ/日記

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

一枚の赤い楓が言った

疲れたね何もなくなってしまって 一枚の赤い楓が言った 痛みなどに立ち会うための庭がある 古い古い何もない庭 そこをゆくとき見られているという感じ 扉の灰色の重たさに ほそりほそり透明に尖りゆく記憶あまいつめたい針になるまで 何か私、渡さなくてはい…

桃色の

桃色のこの空のために死んでもいいひとつの夜を終えてしずけさ 影には満ちて、とろとろ満ちて今までのぜんぶが風に慰められて (「かばん」2023年1月号)

2023.02.25

見ていいことも、「向き合う/対き合う」こともいつも、横から奪って私が先に見る役割になる。それは、どう、意味があるのかと思う。どんな意味をつくれるのかと思う。 私のものではないもの(あなたのものでもない)を、どの位置から、どのように、どのくら…

2023.02.25

見ていい、というところまで来て、目を開く。これからはたぶん、目に見える。目に見えて把握できるぶん、じとっと来る。今まで見えもしないでどうやって支払ってきたのかと思う。見えなかったからできたのかと思う。祭りの後のようだと思う。やっと現実が見…

2023.02.23

ほんとうに知りたいことに出会えずいらいらしている。八つ当たりもする。期待して失望する。自分のなかでうまく対話できるようになればいいと憧れる。時間がなくてエッセンスを知ろうとするけれど、わりと多くの場合、エッセンスになって届いたものをありが…

2023.02.20

あと15分くらいある、と思ってマクドナルドへ入る。注文して、座るために地下へ下りたらあと10分。隅の席にアップルパイとコーヒーと、いろいろな荷物を置く。隣の席の小さい女の子がこちらを見ているのが分かる。今そちらを向いたりそちらを向いて笑う余裕…

2023.02.20

夜、橋の下の川の向こうからこちら側へ、水を掻き分けながらずっと同じペースで渡ってくる水鳥がいた。暗いから動いているものが何なのか見えないけれど、たぶん鳥だったと思う。真っ暗な川にその一羽だけが孤独に動いていて、思わずとても励まされてしまっ…

2023.02.18

正解はないし間違いもない。あなたが言っていることはわかる、言ってくれていることは、全部わかる。とは言っても。私はその話をしていない。ほんとうは、「間違い」はあるはず。正解もあるはずだ。そして、ここに「間違い」がある。ここに、「間違い」があ…

2023.02.17

最近は、翻訳されたものを読む時間が嬉しい。翻訳物は、発された言葉と時間をかけて人が出遭うためのしくみでもあるのだと思う。言葉が、また、読むほうも、遠回りして面倒な行程を経るなかで成熟するのかもと思う。言葉がここにきた時点でよけいな情念や意…

2023.02.17

手に持っているものが多すぎて、ここでは無理だと悟り、テラス席に出た。二月のテラス席は寒すぎる。風でおしぼりの袋が飛んだりした。拾えたと思ったら他のものを落としたりして、みじめな気持ちになる。駅前で、交差点があって、人通りがある。コートのま…

2023.02.11

とても悲しい、いい映画を観た。怒りにも行き場がないけれど、悲しみにも行き場がないのだとすこし知った。では、「忘れる」ということはどういうことなんだろう。

20230210

ゆっくり。という。たとえばそれもあなたが私を理解するための名付けで、私が私のものとして経験するための言葉がない。それでそんなに不服そうな顔、嘘、みじめさ。荒んだ感じ。それらの向かう先もない。 ということだと、ひとことずつ分かる。

2023.02.10

Hayim(命)という言葉は複数形で、ヘブライ語のこの単語には単数形は存在しない。つまりヘブライ語ではわたしたち一人一人には複数の命、つまり複数の生がある。それは連続した生ではなく、まるで一生の間たがいに編み込まれていて、ほどけることによって初…

2022.02.01

幅のない、1つの関係性の持ち方しか知らないで大人になったとして。 「人と関係を結ぶ」ために、手持ちのたった1つの「関係性の持ち方」という蝶番を経ることで、自分が上の立場になったときに、自分が蝶番の反対側にいたときに持っていた感情が、裏返る。そ…