日記

とみいえひろこ/日記

2023.02.20

夜、橋の下の川の向こうからこちら側へ、水を掻き分けながらずっと同じペースで渡ってくる水鳥がいた。暗いから動いているものが何なのか見えないけれど、たぶん鳥だったと思う。真っ暗な川にその一羽だけが孤独に動いていて、思わずとても励まされてしまった。がばっと体を預けて、動いているものが何者か見ようとしたものの、掻き分けられて開かれる水の泡のひだひだが光って見えるだけ。

びくびくしてものすごく慎重に守ってきたものを、合意の上といえ、びくびくしていた頃よりもっと怖がりながら取り外してみたら、心配していたようなことが今のところ起こっていない。起こらないような気もする、わからないけれど。取り外してみたら一歩進んで、また別に取り外せるものが見える。それにはそれの取り外し方があり、とてもそこへ行けないと思う。

思っていたようなことはいつも起こらない。あっけない。もう前のことを忘れてしまった。でも、では、あんなにリアルに、ひしひしと感じていたあれは何だったんだろう。ただの無知ゆえの読み間違いだったのか、やっぱりわたしの意図がそこにあったのか。あんなに、わからなかったし確かめたかったはずの、行き先だけ、欲だけが残って、それらの期待の行き先はどこを指しているのか。「どこ」はどうでもいいことなのか。