日記

とみいえひろこ/日記

2020.12.23

君は生きている人間のことばかり考えている、君の考えに死を組み込まなければだめだ

内藤廣内藤廣の頭と手』(彰国社刊)

 

わたしの選んだ仕事は優雅で居場所がなく、姿を変えつづけ生き延びさせられているということ。わたしにしか、一回きりしか有効でない、それもあやふやで危なっかしい、一歩間違えればいいかげんすぎるやりかたで自分だけを生き延びさせられ、自分で自分をぬくめて楽しませよろこばせること。

こまごまとしたこと、手続き、疑い、心配ごと、世迷いごと、寒さ、動けなさ、体調管理の合間にその長い仕事をしなければならない。間違い、間違い、修正し、修正し、修正するという仕事の合間に。時間がないのに。やることの遅いわたしには時間がまったくないのに、どうやってその仕事をする?

賭けるべきときは来て、明日提出すると言ってしまう。抱えてきたいろいろなことが何も解決できないまま手から離れていく。別のことを組み込むために梅田のほうへ出る。梅田のほうへ出る道のりはどの道も好きで、ことに今年の冬の夜は静かでキラキラしていてとてもきれいだ。UberEatsの人の後ろで信号待ちをする。ほかに誰もいないのにマスクをして急いで自転車を走らせるため息苦しくてばかみたいだ。

耳もとや胸もとにずっと嵐がいて、いつ上がってくるか分からない。ジェットコースターから下りられない酔いの苦さ甘さのなかで、はじめて、懐かしい、甘い苦い音楽を聞いた。自分が密着しすぎて逃れられないと高をくくっていた〈意味〉を剥がす音楽を聴いた。

 

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