日記

とみいえひろこ/日記

2021.05.31

目をあけて起きていても全身が眠っている感じで力が入らず、できるはずなのにできないで提出を遅らせてしまった。

紀大偉作品集『膜』(作品社)。黙黙は音で示すとMOMO。とも違うけれど、近い音だとMOMO。黙黙という音は目にみえるかたちで表されない。この、黙黙という名を享けた存在について、生命について。その鏡の破片についての、無言のひとつの物語だった。物語の語り手は、二度重ねられた黙黙。せめて黙黙自身が語った話であったならその存在の意味があるようような気に(読んでいるわたしが)なったかもしれないけれど、語り手といっても、そこには誰もいない。あとにひびく鈍痛みたいな感覚だけがながくつづく。この感じ。この感じ、何なんだろう、これが誰の何だったと感じてわたしが痛みを感じているんだろう。誰かの何かでないといけないことにしたのはなぜだったんだっけ。わたしが感じていると感じている黙黙たちの痛みは、ないのに、痛い。そこに「何」や「誰」というルールを持ち込み踏み入ろうとするわたしのこの行為は何なんだろう?