日記

とみいえひろこ/日記

2023.04.26

分からせないように。そのことで、つよく刻まれ、憶えていられるように。糸のように絡まってくる物語の物語、ひとりでひとりの描き方を掘り出した手のこと。私の憶えていること、見えていることのうち、何も関係ないものはないということ。用意されていた心の動き方、その中身は、こことそこを埋めるものを掘り出していくことで独特のものになる、誰にも否定されず、理解されずに。ということ。タクシーの向こうにいつもの光、タクシーにもたれるようにして水を吐く人。タクシーと私の間までが私のさっきの範囲。間にいるものは私に見えない背景を見ていた。私には、間にいるものには見えない、けれど彼が感じとっていながら言葉では表さない背景が見えていた。

独特のものになった感情は、少し遅れて名付けられるかもしれないし、もともとあったもののうちに分類されるかもしれない。けど、それともやっぱりぜんぜん別のもので、用意されていた心の動き方とも逸れていくべきして逸れていったもの。それは、良くも悪くも、正しくも正しくなくとも、仕方なく、手によってさぐりあてられた。手は持っていた、持っていたのにそれが何か分からないのは無責任だと感じ、持っていたものを見た。