日記

とみいえひろこ/日記

2023.08.26

今になってふと分かった。そこにいたとき、その人らが、その、いちばん上の人が、その場所を何だと思っていたか、彼が彼自身のことを何だと思っていたか。私もまた、彼とは別の道を通ったにせよ、そういうものの持つへんな何か、実体のないそれに救われ、助けられ、ゆるされてきたという実感があったのだ。その様式くらいしか信用できない、ほかのものは結局嘘ばかりだ、口ばかりだ、と思ってきたのだと思う。再び救われたかったのだと思う。それで目ざとく見つけ、見つけられ、惹かれて入っていって、彼の思う憧れを実現しようとしたのだし、残ってしまったのだと思う。そこは、全員がその、もともとないものを幻想として利用しようとし、自らの弱さをなすりつける場所を求めていただけのただの真似事の場だった。何も共有できておらず、何もかも絶対に無理なはずだった。あれはなんだったのか、ほんとうになんでもなかった、無駄だった。実際のことを今、ほんの少しだけ知ることがあって、自分が求めていたものが何だったか、何を見誤っていたかということに出会う。

もうひとつ、これもずっと。負ったものを何も返せていない、ずっと何もできていない、という自分の受け止め方にも出会う。

『いまは静かな時 韓国現代文学選集』、オ ジョンヒ 波田野節子/訳『夜のゲーム』、丸山健二『さすらう雨のかかし』、李良枝の書いたもの、など。