日記

とみいえひろこ/日記

『山の焚火』フレディ・M・ムーラー/監督

『山の焚火』フレディ・M・ムーラー/監督

 

大きなものを奪われた後にいるような、ここにある何も見ていないような、「祈る」ようにも見える、そういう目つきの顔。その内側で何がどう動いているのか、ここからは何も見えない、わからない。どんな意味もその顔にのせられそうな、のせていいと思わせるような顔。ただの受けとる者へ向かう果てしない時間や、あなたも同じで、あなただってただの受けとる者になる可能性に曝されているはずだということをふと見せてくるような、見てもいいし知っていいというためにひらかれている、ただの物体。ただの無意味。顔を見るほど、その顔を見るわたしの欲望がそこにうつり顕されていくだけのような、奪っても奪っても残る無表情な顔。母親の顔。