日記

とみいえひろこ/日記

2021.02.14

この実はたしかにそう名付けられる。けれど、名付けられ、思われると同時にこの実のこの体は、この実に見えていることは、この実の生き方は放ったらかし。みんないったいどこのどの実のことを言っているんだろう、と思う。

ああ、ほら、そう口にすると同時にわたしも外に出てしまい、この実のことが見えなくなってしまった。

低空に、山谷を折れて吸い、這う音。ぴったりふちに張り付き、穴の底から吸い上げなければこの楽器の音は出せない。

この音と犬がいれば、(いなくても、)ほかに何も。