日記

とみいえひろこ/日記

2022.07.13

6(穏やかな声が書き取らせる)

もはやここにいないひとりの女が私のそばにいて、静かにこの本を私に書き取らせる。

パスカルキニャール 小川美登里/訳『いにしえの光』(水声社

 

キニャールの本が大好きで、新しい本に書かれていた「往古」という言葉を頼りに戻っていく。時間があったからでもなく、戻ろうと思ったわけでもなく、何かの間違いで、ちょっとしたタイミングの問題で。戻る、と、そのときに立ち止まれなかった言葉にやっと出会う(この文章ではなく。この文章とも、はじめてのときの出会い方はもうできない。けれども何度も思い出す)。なんだ、このときにこのことを言っていたじゃないか、と思う。ずっと書いていたのに、同じことを。キニャールの書くもの、いつもわたしを黙らせ、戻らせる。鏡に突き落とす…突き落としてはくれない、だから、鏡の沼のあたりをうろうろしたくなる。

 

Say something, I'm giving up on you

ながくこの曲をかけていた。どういうことなんだろう、どう受け取って訳すのがいいだろう、何にとって。

Say Something - song by A Great Big World, Christina Aguilera | Spotify