日記

とみいえひろこ/日記

2023.04.15

トニー滝谷市川準/監督

 

ぼろぼろ泣いてしまった。セリフの演出も、ドキッとする。
服を買いすぎる女と孤独な男の話で、依存によって、強迫によって生きのびるうちがわにある空っぽさが滲み出していてたまらなかった。
誰かが、できれば自分が、自分を見てくれる人が、後になってでもその空っぽの存在を認めて泣くことが供養になること。空っぽというのはそれが正しく認められるまで膨らみつづけるし、繰り返すし、主張してくる。
はじめから見えていた空っぽがかたちを変えたのか、見るほうが場所を変えて空っぽのうちがわに入ったのか、見たものは秘密を守ることにし、またひとりぼっちになった。見る場所や時を間違うと、侵入された恥ずかしさと間違った罪悪感だけが残る。

ひとりぼっちになって、もう会うことはない。それからがそれぞれの影の部分でふたりが重なってゆく生きた時間だったのだと思う。

書き終えて、映画を観終わったあとの時間もそうなんだと気づく。

「ひとりでつづきを続けるために、時間をとりたいんです」というようなことを、残された男が言っていたと思う。彼にとって必要なその時間と同じ意味の時間を、その男と一緒にいるあいだに彼女は過ごしていたのかなと思う。ゆるやかな搾取も交えながら、自立のためにかけた、一緒にいながらひとりの時間。