最後は言葉で言わなくては難しいことが多く、ほんとうはもう何も言いたくない。ぜんぶ嘘だった、もう嘘はつきたくない。もう何も言うことはほんとうにない。空っぽがどんどん空っぽになるばかりで、できればずっと黙っていたい。
と、思うときが折に触れてある。
なんとなく、方針が自分のなかだけで決まって、たぶん何度も伝えた気がする、分からないと思う、立場が違うから。
金いろのザボンを胸に抱きをればいつしか鬱の実となれるらし
自死のまへのゴッホが描きし「ドービニーの庭」夜の映像にひとり見てゐし
存在にこだはりてゐるわれを措きてスープは卓に配られはじむ
雨宮雅子『昼顔の譜』