『市子』戸田彬弘／監督。市子は欲を持ってしまった。欲を持ってしまって、生き延びる。
現実とわたしとを見て、できるだけあらゆる手を使って自由に見て、どのようにやっていくか、付き合っていくか、向き合っていくか。それに尽きるのか。とか、どれだけ追い詰められたと思ってもけっこう選択肢はある、とか、後から思う。別の市子の選択が無数にあって、もっと欲深く卑しい側を濃く描いたのを観たかったらしき私だったのかと思った。さまざまなジャンルの人が、そういう人としてすごい極端にパターン化されて描かれているのも嫌だなと思ったり、伝えたいこと、分からせたいことの成分が細かいところで強すぎる感じがして、そちらが気になってしまった。映画は休日ではなく、平日に観に行こうと思った。俳優のたたずまい、存在感を観るのが好きだと思った。
ものごとを、それと私のあいだにおいて見合う区切り方で区切って、それに見合う時間をかけて向き合う、あきらめをもって落ち着いてやる、ということが、だんだん、少しずつ、できるようになってきた、と思う。同時に、ひとつひとつ時間がかかる、ということの重たさを感じ取っている。
グニラ・ガーランド 熊谷高幸 石井バークマン麻子／訳『自閉症者が語る人間関係と性』、佐藤康邦『絵画空間の哲学』、合田正人『レヴィナスを読む』、山上雅子『物語を生きる子どもたち 自閉症児の心理療法』など。
