日記

とみいえひろこ/日記

『タロウのバカ』大森立嗣/監督

最初からきつい、ずっとしんどい映画だった。光の感じと、衣裳がいいなと思って、服の感じを見ていたら、「穴」が心に残った。穴のあいたセーター、首に巻いた黒いリボン。傷口がどんどん開いて、最後はほとんど穴のタンクトップ。そう思うと、川で雨が降っていたシーン、死んだ子の前に映されていた何も容れない小船も、何も入るもののない穴だと思えてくる。壺も。壁を蹴って穴を開けたが、銃口は最後までこちらからは見えなかったと思う。穴を埋め込むように「へこみ」を自分のなかに取り込んでしまった方は、生き延びずに死んでしまった。穴、うしなったもの、傷口。あの子らの棲んでいる場所自体が何もない穴の、すこしへこんだ地帯だった。口も穴だ。銃口を見ずに見た子の口から出される言葉は、何にも届かなかった。

観終えて長く思い出すのは今はあの小船。ぜんぜん別の、大きなダムの、ゆきばのない映像を思い出して怖かった。

光の感じがきれいで、陽のなかで蒼白の少年が横顔をさらす画を撮りたかった、それがもとなのかな、など思った。そうでなくても、何か一枚の絵がどうしても気になって自分が何よりそれを見たいがためにここまでつくってしまう、そういう衝動からものごとに辻褄が合ってくる、創作がなされてゆく、ものがつくられる過程は案外そういう感じのように思う。

映画を観るときのテーマは自分のなかで決まっている。