日記

とみいえひろこ/日記

2020.12.11

腰から下が寒く気持ちが浮いていて逸れながらたくさん抱えてしまう。らっきょうが食べたくなって一日らっきょうを食べる理由を探す、理由がなくても食べればいいのだけど、理由を探したい日だった。

小説を読み出したら止められない感じになってしまった。何しろ10年は小説を読まなかったのだ。止められなくなるあの感触はもうわたしのものではないけれど誰かの懐かしいものという感触はあって、この感じにずるずると引きずられてゆく。いつもずっとつっかえているものと一緒にいる、それらと別の管を通っておそるおそる近づいていくことができる。

 

子供の夢、錯乱、砂の城、換喩的な逃走、砂漠化した土地、あるいは倒錯したジャングル。そのすべてがいまだ探検を待っている。


ジャン・ウリ 

 

田村尚子『ソローニュの森』(医学書院「シリーズ ケアをひらく」)

表3の見返しに極めつけの仕掛けがあった。

横組み、段落2字下げ、ほっと呼吸ができるような余白で設えられていて、薄いグレーでいたずらがきの生き物が言葉の下に時々現れる。タイトルの文字のアキ、ズレはどもる言葉や呼吸。白黒がなく、グレー、ブレ、ピンボケで束ねられている。

 

昼ぼんやりしていて何も進まず、朝夜にギリギリ間に合わせる。ギリギリの許容範囲がのびていく。